ビール各社の販売戦略が変わる酒税改正
「ビール業界の意見を十分聞くことができず調整が遅れた」とは党税調関係者の弁ながら、2年続けての棚上げに財務省は失望した。ビール類の税額は350ミリリットル缶でビールが77円、発泡酒は47円、第3のビールで28円と大きな開きがある。財務省は将来的に税率を55円に一本化する酒税法改正を目指してきた。発泡酒、第3のビールの税額が引き上げられ、ビールの税額は下がるとなれば、ビール各社の販売戦略は大きく影響を受けることは避けられない。
ビール業界が酒税法見直しに、必ずしも一枚岩でなかった節もある。確かに、税額が下がるビールは、小売価格が下がり、販売増が見込まれる。逆に、低価格を売りにビールの市場を奪ってきた発泡酒、第3のビールは販売面への打撃が予想される。その意味で、ビールでトップ独走の「スーパードライ」を擁するアサヒビールは、恩恵を受けるだろう。「ビール回帰」に向け、ビールの主力商品「一番搾り」へのシフトを鮮明にしてきたキリンビールも同様だ。
半面、ビールの主戦場である中級品市場に昨秋、29年ぶりに新商品「ザ・モルツ」を投入したサントリービールとなると、第3のビールがビール類販売の5割を超え、複雑だ。10月半ばにはサントリーホールディングスの新浪剛史社長と鳥居信吾副会長が、都内のホテルで安倍晋三首相と麻生太郎財務相と面会した事実があった。新浪氏は政府の経済財政諮問委員会の民間議員で、安倍政権の信頼もあり、酒税法見直しの先延ばしを求めたとの臆測が業界内に広がった。
酒税法見直しは、結果的に政治に振り回され、先送りされた上に、消費税増税が絡み、この先もすっきりした着地点が見通せない。それだけに、後味の悪い飲み心地になったのは言うまでもない。