話し下手とは伝わらないこと
では、客観的に見て「話し下手」とはどういうことでしょうか。
問12「『何が言いたいかわからない』と言われたことがある」では4割がYESと答えています。話す内容が相手に伝わっていないということは、話が下手だということです。
ところが、話し下手ではないと思っている人のうち、27%がここでYESと答えています(図2)。本当に「話し下手ではない」としたら、この結果は矛盾しています。実際には、この人たちは自覚していないが話し下手だと考えられます。
また、問3「会話中の沈黙が怖い」は、自分自身や話の中身に自信がないことの表れです。自信があれば慌てて沈黙を埋めようとはしないからです。やはり矛盾しているのは、話し上手を自任する人でも4割以上は「沈黙が怖い」と答えていること(図3)。この人たちもまた、潜在的な話し下手だと考えられます。
つまり、話し下手というのは、自覚のあるなしにかかわらず、「自分の意図を相手に伝えることが不得手な人」ということができます。
以下、アンケート結果から話し下手の特徴を指摘していきます。
まずは、話し方に関する癖や習慣について見ていきましょう。
問18「発言中、つい『えーとですね』など必要のない言葉をはさんでしまう」。よくよく観察していれば、人は誰もがそうした必要のない言葉(ノイズ)を口にします。3分の2がNOと答えていますが、それは自覚がないということです。私自身、いまでもノイズを口にしてしまうことはあります。
話の中にノイズが入ると聞き苦しいため、なるべくなくすようにするのがいいのですが、自覚がなければ矯正もできません。その意味では、YESと答えた3分の1の人の方に可能性を感じます。
話し下手の心理がよくわかるのが、問21「話をして人を楽しませるのが好きだ」と、問8「他人の服装や小物を褒めたことがない」。話し下手を自覚している人は、人を楽しませるのが苦手(図4)ですし、相手を褒めることもあまりない(図5)という傾向がはっきり出ています。
特に図5では、話し下手な人の4割もが「褒めたことがない」と答えています。
褒めるとは、言葉による相手へのプレゼント。お世辞を言うのはウソをついているようで嫌だという人もいますが、決してそんなことはありません。言葉のプレゼントを渡して相手に喜んでもらいたいと思うのは、「伝わる」という結果を重視する人のあり方です。その意識がまったくない人は、伝わらないことを相手のせいにしてしまっている可能性があります。
話し上手の条件ともいえるのが、他人への共感力です。問7「最近、テレビや映画に感動して泣いた」は、そのことを示しています。図6を見ると、話し下手ではないと思っている人は56%がYESと答え、話し下手な人の46%と比べて10ポイント上回っています。
泣くというのは、感受性の豊かさを示す1つの尺度。人の心を動かすためには、まず自分が感動していなくてはなりません。話し手の心の震動が聞き手に伝わり、共振することで共感が生まれるからです。