業績回復基調だが給料アップは期待薄

「ガブ飲み」中国、世界不況の余波……
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「ガブ飲み」中国、世界不況の余波……

世界の鉄鋼需給は、今、中国を中心に回っている。国別粗鋼生産量で首位を走り、2009年は前年比13.5%増の5億6780万トン(世界鉄鋼協会調べ)。世界の生産量に占めるシェアは46.6%と半分に近い。一方、経済成長が続く中国はまた世界一の鉄鋼消費国でもある。こうした状況の中、原材料の鉄鉱石を扱う資源会社は、中国向け小口取引(スポット)価格を指標に、「従来は1年単位で行ってきた鉄鉱石価格の改定を四半期ごとに行う」よう取引先に通達した。原料の値上げは不可避となり、その結果、大手4社の「業績予想の見送り」という異例事態が生じた。

かつての鉄鋼王国日本は世界2位につけているものの、2009年の粗鋼生産量は前年比26.3%減の8753万トンと、1969年以来40年ぶりの低水準を記録。今年上半期は自動車生産や家電向けが好調で、粗鋼生産量は5542万トン(前年同期比27.9%増)と回復。それがそのまま業績に結びつくかは疑問だ。

鉄鋼・非鉄・電線・金属製品とも、リーマンショック以降の大幅な減産、世界同時不況による需要の冷え込みが給与にも暗い影を落とす。鉄鋼は、高炉・電炉の別も含め、上位企業の年収差が比較的少ないのが特徴だ。JFEスチールが763万円と頭一つ抜け出している。売上高世界7位・国内トップの新日鉄は633万円と意外に低調にみえるが、データの取り方の違いによるもの。新日鉄は役職者の年収を除いて算出しているためで、実際には大きな差がない。

唯1年収増(32万円)の合同製鉄は、「賞与が年間の業績に連動する他社に対し、当社は半期単位の業績連動のため」(総務部)という。大同特殊鋼603万円(152万円減)、鉄鋼大手5社の一角で日新製鋼504万円(133万円減)も大きく年収を下げた。

非鉄は、持ち株会社ではあるが、環境・リサイクルなどへの事業拡大が順調なDOWAHDが3年連続トップ。古河機械・住友金属・三井金属・三菱マテリアルの財閥系4社が順不同で続く構図は例年と同じ。電線も、06年4月に持ち株会社となった昭和電線HDが割って入った程度で、順位に目立った変動なし。金属製品での注目は、一気に167万円も上げて1000万円の大台に乗せた住生活グループだ。「執行役員クラスの人数が増えたため」と広報部は説明する。気になる横浜ベイスターズ球団買収は、本拠地移転など買収後の経営をめぐってTBSと調整がつかず、買収を断念した。

※すべて雑誌掲載当時