機械業界を襲うダブルショックとは

円高ショックで機械の苦闘続く
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円高ショックで機械の苦闘続く

「リーマンショックの2008年9月までは、じんわりと価格が上がりつつあったが、その後は暴落。工事現場自体が少なくなり、再び単価を下げる“我慢競争”になってきている。もはや、設備投資の意欲は全くない」

都内で年商約3億円の建機リース会社経営者はこう語る。自社の建機を持つ企業はまだ“体力”があるが、レンタルで回している企業は価格競争から早々に脱落するといい、新規に建機を購入する見通しは立たないと嘆く。何も中小・零細企業だけの話ではない。その“世界恐慌ショック”に追い打ちをかけるように、「公共事業費大幅削減」と「円高」のダブルショックが機械業界全体を襲っているのだ。

建設機械の日本でのシェア堂々1位のコマツは、着実に海外でのネットワークを広げ、今やアジアでのブランド力はキャタピラー社を凌ぐまでに成長し、世界シェアも2位に位置するまでになってきた。しかし、前年平均よりも約100万円減で700万円割れとなり、来年以降もダブルショックの影響は避けられない状況だ。

産業用ロボットや自動車関連などの機械メーカーはさらに事態が深刻。08年は平均700万円台が3社あったが、軒並み80万~200万円近くダウン。さらに今年の円高が追い打ちをかけるのは必至で、好材料がないとの見方が強い。

一方、09年度は減少傾向ながら、今後は上向きが期待されているのが水処理関連企業だ。政府は2010年6月にまとめた新たな経済の成長戦略で、水関連ビジネスの海外展開を柱の一つに掲げている。欧州の“水メジャー”に対抗するため、今後は官民一体となった事業展開の流れが加速していく中で、国内大手の栗田工業をはじめとした水処理企業は注目を集めていくだろう。

パチンコ機械関連は明暗がくっきり分かれた。ホールコンピュータでは業界シェアの約4割を占めるダイコク電機は、パチンコ関連のテレビ番組の制作にも積極的で業績は堅調。その勢いは年収にも表れており、平均で800万円に迫る伸びを示した。パチンコメーカー最大手のSANKYOも順調な伸び。

また、ダイコク電機は愛知・名古屋、SANKYOは群馬・桐生と、それぞれ地方発祥の会社だ。地方が疲弊している中にあって、業界で1位・2位が地方出身企業であることは頼もしい限りだ。堅調を誇っていた造船関連も綻びが見え始めた。

※すべて雑誌掲載当時