12月18日の市長任期切れに合わせ政界を引退する橋下徹大阪市長が、政権獲得に向け始動した。新党結成から5年間で自ら「ポスト安倍」を狙う。地方首長からの国政政党代表と宰相への道を順調に歩んできた橋下氏は、維新の党分裂に伴う国会議員の不甲斐なさを痛感し、政権獲得への強い決意を固めたようだ。11月22日の大阪府知事・市長ダブル選は単なる首長選ではなく、橋下氏による「国盗り物語」のスタートだ。短期間で一国のトップに上り詰める大胆な構想の裏側とは。

大阪市選挙管理委員会のサイトより

「6人の大阪府議でスタートし、5年でここまできた。同じ加速度なら、5年後には衆院で過半数までいける」。橋下氏は10月31日の記者会見で、新党結成により本気で政権獲得を目指す考えを表明した。注目されたのは、政権与党になるまでの「期間」と「スタンス」。橋下氏はそのスピードを具体的な例を用いて「5年」と宣言したからだ。安倍晋三政権の最高幹部は「2018年までは安倍政権が続く前提だが、その次の衆院選で大勝を果たして政権奪取する考えなのだろう」と「5年」とした理由を分析する。

つまり、橋下氏は16年に安倍首相が衆院解散・総選挙を断行すると読み、その短期間では準備が間に合わないために1度政界を引退する。16年に当選した衆院議員の任期は20年まで。自民党は16年の衆院選でも与党勢力を確保するとみられるが、議席数を減らし勢いに陰りが出るのは必至だ。安倍首相の自民党総裁任期が満了となる18年は内閣支持率の低下などにより衆院を解散できず、次々回の衆院選は20年になると計算したのだろう。

政権奪還に向けた「スタンス」も明確に打ち出した。橋下氏の構想は地方からのうねりがポイントだ。橋下氏は「地方創生のために日本の行政機構を変えていく、という挑戦の意味を込めて(新党名に)『おおさか』の名称をつけた」と表明した。大阪を基本にかつての「藩」を構成するものの、地方創生を旗印に首長らとの連合体をつくり上げて勢力を拡大し、首都・永田町を取り囲む戦略を描いているようだ。現時点で政界引退後は「フリーハンドでやらせてもらう」とうそぶく橋下氏。その動向から目が離せない。

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