金融広報中央委員会は11月5日、「家計の金融行動に関する世論調査」(2人以上世帯)を発表した。それによると、金融資産の平均保有額は1209万円で、昨年(1182万円)よりも27万円増加していることがわかった。金融商品別で見ると、預貯金が53.2%、有価証券が17.7%、生命保険が16.9%という結果に。
こう聞くと、「意外に多いな」と感じる人もいるかもしれない。しかし、これは全世帯の資産を世帯数で割った平均値のこと。つまり、富裕層が平均値を引き上げているというのだ。ファイナンシャルプランナーの黒田尚子氏は次のように分析する。
「資産を多い順、少ない順に並べていって、ちょうど真ん中に位置する世帯の値を『中央値』と呼びます。多くの人が感覚的に想像する『平均』は、こちらのほうが近いでしょう。ちなみにこの調査での中央値は400万円。これは、1年前と変わっていません。また『貯蓄がない』と答えた世帯は30.9%と、前年と比較して0.5ポイント増加しています。いっぽう、金融資産を保有している世帯だけで見ると、平均額は前年より66万円増え1819万円となりました。すでにある程度の資産を持っていた『お金持ち世帯』の資産が増え、全体の資産を引き上げたということがわかります。この1年で、貧富の差はより一層開いたと言っていいでしょう」
富裕層の資産の増加要因としては、アベノミクスで景気が上向きになったことにより、収入がアップしてその分が貯金に回されたこと。株の評価額が上がったり、債券や投資信託の配当や金利が入ったりしたことなどが考えられるという。「持てる人」は順調に資産を増やし、正業に就けない「持たざる人」は依然として苦しい生活を強いられているようだ。