IS、難民、中国経済市場は波乱含み

ここ数年、黒田氏のもとには「増えた資産を運用したい」という相談が多く寄せられたという。株などで得をした人の話を聞くことも多かったため、「自分も投資してみよう」と考えた人が多かったのだろう。「平均値」世帯へのアドバイスを求めたところ、こんな答えが返ってきた。

「その世帯がどのフェーズにいるのか(マイホームを購入してローンがある、子どもが大学進学しているなど)、どんな生活がしたいかによって必要な資産は変わるので、1209万円あれば安心とも、400万円で不安だとも言えません。ですが、私がアドバイスするとしたら『リスクヘッジとして、貯金だけでなく投資をはじめるのはいいことだけど、これからの市場はかなりの波乱含み。初心者が丸腰で挑むのはお勧めしない』と言いますね。波乱の要因として、たとえば先日は、パリでイスラム国による同時多発テロがありました。ヨーロッパ全土には難民の問題もあります。また、オリンピックで盛り上がったかに見えたブラジルレアルの下落は止まらず、新興国株も『先行きは怪しい』と言わざるをえません。中国経済もいつ崩壊するかわからない状態です。さらに、アメリカの利上げの先送りが決まりましたが、いざ利上げが行われれば、株を売って債券を買う人が増えます。となれば、アメリカの株価に引きずられるようにして日本の株価も下がってしまうでしょう」(黒田氏)

パリで発生したテロによる経済への影響は限定的との見方が強い。(時事通信フォト=写真)

ここ数年は市場全体が上向きだったために「ビギナーズラック」もあり得たが、今後はそう簡単にはいかないということだ。リターンを求めて闇雲に投資するより、リスクについてよく学ぶべき時期なのだろう。黒田氏は、投資の基本を確認するよう念押しする。

「『長期』『分散』『積み立て』が投資の基本です。目的もなく投資をはじめると、目先の利益に目がくらみがちですが、基本さえ押さえていれば、ある程度の乱高下は気にならなくなります。それが安定した投資を続ける秘訣でもあります。来年からは『ジュニアNISA』もはじまります。贈与税の枠(年間110万円)の範囲内で資産を移動させれば相続対策にもなりますし、教育資金等を形成する助けにもなります。資産に余裕のある『平均値』の人は、ぜひ活用してください」

黒田尚子
CFP1級FP技能士、消費生活専門相談員。近著『50代からのお金のはなし~介護、相続、実家対策まるわかり』。
(時事通信フォト=写真)
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