なんとなく信頼できる印象を与える人と、そうでない人。心理学的な観点からみて、両者にはどのような違いがあるのだろうか?
周囲の人たちから信頼されるかどうかは、コミュニケーションの総量で決まる。三河屋商法と呼ばれる御用聞きが「何か足りないものはありませんか」と、毎日顔を出すのは、顧客とのやりとりを増やすためだ。毎日顔を出すから信頼され、注文が取れる。
人は接触する回数が増えるほど、その相手への好意も信頼も高まる。これは「接触理論」と呼ばれるもので、テキサス・クリスチャン大学のドナ・デスフォーゲスの研究で、「嫌いな人でもやりとりをした後には、偏見や差別の心が減る」ことが確認されている。さまざまな人種が集まる米国では、自分と異なる文化に対する偏見や差別がある。そこで、無理矢理にでも接触回数を増やすと好感を持たれるが、接触が少なく、「何を考えているかわからない」と思われると、嫌悪感を持たれるのだ。
そこで、周囲の人から信頼されるには、自分から積極的に話しかけ、コミュニケーションの総量を増やせばいい。取引先から信頼されたければ、頻繁にメールを送ったり、顔を出すようにする。上司や同僚、部下なら、相談を持ちかけたり、雑談をする。
「提案する企画がないと顔を出しにくい」とか「仕事のじゃまをしそうだ」と考える人もいるが、それは話しかけないことを正当化する言い訳だ。都合が悪ければ「今は忙しいから次の機会に」と言うだろう。
話しかけるのが苦手なら、挨拶することから始める。それも相手から挨拶されるのを待つのではなく、「先手は取らせないぞ」くらいの気持ちで、相手が100メートルくらい先にいても大きな声で自分から挨拶する。返事が戻ってこなくても、気にせず、続けることが大切だ。
(構成=大山弘子)