30分以内に回答がもらえる

「グーグルに来てびっくりしたことはいろいろあるんですけど、一番はこれですね。つまり、部門をまたいだ質問がすぐにできちゃうということ」

アメリカ生まれの陽気な営業マン、椎名エバレットさん(エンタープライズ部門セールスマネージャー)がこういって身を乗り出した。

椎名さんは別の外資系IT企業からの転職組だが、前職時代は「ある製品について、たとえば『このバグいつ直るの?』と相談をしたいとき、いくつものハードルをまたいでいかなくちゃならない。個人的にエンジニアと仲良しだとか部門のトップ同士が親しいとか特別な事情がないと、すぐには情報にたどりつけなかった」。大組織にありがちな弊害だ。

▼例題にチャレンジ
Q. あなたは飲料メーカーの販売促進担当者です。新商品のPRを担当することになり、他社製品の反応や世の中の流行など広く情報を得たいと思っています。また、資料として携帯電話で写真を撮っておくことが多いけれど、撮りっぱなしで活用できないのが悩みです。効率よく情報を収集、活用するにはどうすればいいでしょうか。

ところがグーグルでは、社内向けにWeb上で質問を投げると「だいたい30分以内に答えをもらえる」という。ルートはさまざまだが、たとえばメーリングリストの機能を果たす「グーグルグループ」。グーグル社内では日本法人全社員、アジア太平洋地域でYou Tubeに関わる人間など、いくつものグループが設定されていて、そこへ質問をアップすると、グループに属した事情に詳しい社員から素早く返答が届くという。

また、グーグルではSNSサービス「グーグル+」を社員同士の情報交換ツールとして活用しており、こちらに質問を投げても同じように迅速なタイミングで「親切な答え」が返ってくる。たとえば、こういう具合だ。

「僕は日本国内の大手の製造業や運輸業向けにグーグルのサービスを販売しているのですが、アメリカのほうが先進的な取り組みをしているケースも多い。そこで、たとえば製造業に関するアメリカの事例やレポートがないかな、と思ったときに『グーグル+』のコミュニティを通じて質問を投稿します。すると顔を見たこともない人から、いろんな情報がポンポン、ポンポン入ってくるんですよ(笑)」

一言だけの返信もあれば、関連資料のリンクが貼られていたり、相談すべき人のリストがついていたりする。グーグル社員はおそらく、自分の知識を人に教えるのが大好きなのだ。

椎名さんにしても「もらいっぱなし」ではなく、業務上詳しいことや、たまたま知っていたことが「グループ」や「グーグル+」で話題になっていたらすぐに情報をアップする。

この美風は、システムの優秀さによるというよりも、個々人のメンタリティによるものだ。しかし、優秀な人は基本的に「教えるのが好き」である。「グループ」や「グーグル+」が、その性質を発揮しやすくしていることは事実だろう。