情報共有で参加意識を高める
マーケティング部の根来香里さんは本業以外に、グーグルが主導する東日本大震災の被災地支援事業「イノベーション東北」のマネジメントも担当している。グーグル社内のほか、東北の現地企業の人たちなど関わる人が多く、それぞれの立場やネット環境もさまざまだ。メンバーは全部で30人ほど。
Q. あなたは広告代理店の企画担当者です。2020年東京オリンピック招致にむけて、関係各社とともにキャンペーンを行うことになりました。社内外の担当者とスムーズにやりとりをし、万が一のトラブルに備えてその経緯を記録、資料の共有化を強化したいと思っています。会社の枠を超えて、できるだけ簡単にプロジェクトを回す方法はないでしょうか。
一方、根来さん自身はプロジェクトの専任ではないので、この件に割ける時間は限られている。そこでフル活用しているのが、「グーグルサイト」という特別な知識がなくてもWebサイトが構築できるサービスだ。
「まず『グーグルサイト』でプロジェクトサイトを立ち上げ、どこに何の情報を入れればいいかという章立てをします。それが私の仕事のカギだと考えています。あとはたとえば、気仙沼や釜石にいるコーディネーターと呼ぶ人たちに、どんどん情報を入れてもらいます」
1カ月弱で作り上げたという「イノベーション東北」のサイトをのぞかせてもらった。プロジェクトの概要やコーディネーターのプロフィール、記者発表の資料、落選案をすべて含めたロゴマークのプランなど、さまざまな情報が画面上にわかりやすく配置されている。
このサイトを完成させたのは地方在住のコーディネーターを含む、プロジェクト参加者全員である。もしこれを事務局(根来さん)だけが集中管理するスタイルで進めていたら……。
「いろんな方にまずメールを出して情報提供をお願いし、テキストや写真データを返信してもらう。それが集まったら、サイトの書式に加工して順次貼り付けていく……。そういう手順で進めると思いますが、作業に時間をとられるうえ、伝達ミスや誤解によって、いくらかロスが生じていたかもしれません」
結果、プロジェクト全体の進捗が遅れ、メンバーの士気が下がってしまうおそれもある。根来さんが取り入れたのは、メンバー個々の関与によってサイトの完成を早め、さらにプロジェクトへの参加意識を高めるという一石二鳥の仕組みである。
「まずサイトを立ち上げて、この部分へ何日までにこのような情報を入れてくださいとお願いします。すると、みなさんも『締め切り』意識を持って関わってくれるようになるんです」
「サイト」を設置する目的は情報共有である。「イノベーション東北」に限らず、グーグルではプロジェクトを進める際に、関与するメンバーが常に誤解なく同じ方向を向くように情報の共有を徹底している。
「ふつう部分的な仕事をする人は、全体像がなかなか見えません。『プロジェクトの概要』について一度はレクチャーを受けるでしょうが、それでは忘れてしまうかもしれません。思わぬ誤解によって仕事が脇道にそれていったりしないように、何が目的なのかといった大事なポイントについては、常に確認できるようにしてあります」