親からの相続ではなく、一代で財を築いた人たちはどのような考えを持ち、行動をしているのか。これまで1000人を超える大富豪を見てきた本田健氏に彼らの共通点を分析してもらった。
お金の使い方:なぜ物より体験に投資するか
ミリオネアは高級ブランドに囲まれて暮らしていると思い込んでいる人はいないだろうか。残念ながら、それは誤ったイメージだ。
世界各国を飛び回るマダム・ホーは、通貨ごとにブランドの財布を使い分けている。一つ一つはそれなりの値段がするが、その多くは10年、20年前に購入したものだ。
「財布は壊れたからといってすぐに新しいものに買い替えたりしません。壊れたら修理して長年、大事に使うべき。親からはそう教わりました」(マダム・ホー)
しかし物については贅沢をしない一方で、ミリオネアは必要だと考えるところには惜しげもなくお金を使う傾向がある。
「日本に滞在中は、つねに帝国ホテルに宿泊しています。帝国ホテルに泊まっていると言うと仕事相手から信用を得られますし、ここはサービスのレベルが高くて、コンフォータブル。快適に過ごせないと仕事にも支障が出るので、そこはお金を惜しみません。それから、車は必ずベンツです。アメリカは車社会なので、ドイツ車に乗っていることはステータスの証しになり、信用が増すのです。そして何よりベンツは頑丈で、たとえ事故に遭っても命を落とす危険がほかより少ない。信用と安全にはお金をかけるべきです」(マダム・ホー)
ケチるところはケチり、使うところは使う。この極端さが、ミリオネアの特徴の一つだ。
一方、本田氏は、「一代で財をなす人は投資的なお金の使い方をする」と指摘する。
「100万円あったとき、普通の人は一部のお金を贅沢に使い、残りを貯金するというパターンが多い。一方、ビジネスマインドを持っている人は100万円をどう使うと101万円になるかと考えている。一代でミリオネアになった人に話を聞いても、20代で貯蓄をしていた人はほとんどいません。事業や投資を始めるために貯蓄することはあっても、無目的に貯蓄はしていないのです」(本田氏)
アズグループホールディングス会長の松田元氏も、投資的なお金の使い方に賛成だ。
「物欲を満たすためにフェラーリを買う人がいますが、僕には理解できない。外車を買っても、得られるのは物の価値だけです。それより重要なのは、体験に投資すること。旅とか人と会うといった体験に投資すれば、フェラーリ以上の付加価値を生み出す人になれる。物に投資するより、形のないものにお金を使ったほうがずっと豊かになれます」