私はインドネシア出身の華僑である夫と結婚してアメリカで暮らしていますが、もとは大阪の商家の生まれ。商売をやっている家庭で生まれたせいか、自分がお金に困るという想像をしたことがありませんでした。ただ、それは実家に資産があるからではありません。自営業は毎月のお給料が決まっている会社員と違って、働けば働くほど収入が増えます。そのような環境で育ったので、「自分が努力すれば、いつでもお金はついてくる」という意識が自然と身についたのです。

投資家、作家、講演家 マダム・ホー氏

しかし、その自信が揺らいだことが一度だけありました。親の介護で一時帰国したことをきっかけに勤めていた病院をクビになり、収入が激減したのです。当時は結婚したばかりで、初めて迎えた夫の誕生日もレストランでお祝いができず、おにぎりをつくってサンタバーバラのビーチにピクニックにいくしかありませんでした。

初めて経験した貧乏に、私はみじめな気持ちでいっぱいでした。でも、そのとき夫がおにぎりを頬張りながら言った一言に救われました。「日本のお米は冷めてもおいしいね!」。夫がこう言うのを聞いて、クヨクヨしている自分が馬鹿らしくなりました。仕事はないけれど、おにぎりはおいしいし、海は青くてきれい。それでいいじゃないかと、ふと思えたのです。

不思議なもので、ケセラセラの心境になって肩の力が抜けた途端、運も向いてきました。知人の紹介ですぐに仕事も見つかったし、さらに社長秘書や同時通訳といった仕事をするチャンスが訪れ、収入はどんどんと増えていきました。