VPD(Vaccine Preventable Diseases)とは、ワクチンで防げる病気のこと。日本には公費負担で無料の定期接種ワクチン、有料の任意接種ワクチンがある。最近では、細菌性髄膜炎を防ぐヒブワクチンと肺炎球菌ワクチンの有料接種が可能になった。
多いように見えるが、実は日本はワクチンに関しては後進国。欧米では、ヒブワクチンは20年前、肺炎球菌ワクチンは10年前から無料接種。今冬猛威をふるっているロタウイルス胃腸炎のワクチンにいたっては、WHO(世界保健機構)が最重要ワクチンに指定しているにもかかわらず、国内には承認されているワクチンすらない。米国ではJ・F・ケネディ大統領の時代からVPDが重視されている。医療費の低減にもつながるからだ。
「かつて日本は予防接種の先進国だった」(日本赤十字医療センター小児科の薗部友良氏)。厚生労働省が予防接種に消極的になったのは、1973年に予防接種被害の集団訴訟で提訴され、負けたため。日本は“過失補償”の法体系であるため、接種後に重い病気に罹ると接種医か厚労省に過失がなければ救済できなかった。裁判以降、厚労省はワクチンの認可や定期接種化に消極的だ。
現在の医学では、接種後の重い病気のほとんどはワクチンとの因果関係がない“紛れ込み事故”だと判明している。「細菌性髄膜炎のワクチンが、欧米の3年遅れで日本に導入されていれば、1万人以上の子供が罹らずに済んだ」(薗部氏)。せめて防げる病気からは子供たちを守ってやりたいものだ。
(ライヴ・アート=図版作成)