「TOP of TOYOTA」の新型モデル
トヨタ自動車の高級車ラインナップの象徴といえば、今年で初代登場60周年を迎える「クラウン」であろう。一時、その上に「セルシオ」が置かれたことがあったが、10年前のレクサスブランド日本展開を機にトヨタブランドから切り離された。1991年にクラウンから派生する形でデビューした上位モデル「クラウンマジェスタ」もあるが、確固たる地位を築くことはできなかった。クラウンは今も昔も、日本の高級車の代名詞であることは言を待たない。
が、実際にカスタマーから支持されている高級車という観点から見ると、クラウンはすでに“王座”を失陥して久しい。トヨタの高級車ラインナップで最も良く売れているモデルは、大型ミニバンの「アルファード」「ヴェルファイア」だ。2012年末に“リボーン(生まれ変わり)”をうたい、クラウンが現行モデルにフルモデルチェンジした。近年の高級車としては異例ともいえる好調な売れ行きだったが、2013年の販売スコアでは、08年にデビューし、モデル末期に差し掛かっていた2代目アルファード/ヴェルファイアの合計台数に及ばず、14年はさらに差が拡大した。
そのアルファード/ヴェルファイアが今年1月末にフルモデルチェンジされ、3代目となった。新型モデルの仕立ては、日本の高級車市場における政権交代を象徴するようなものだ。周囲を威圧するようなフロントマスクをはじめ、存在感を高めることにすべてのリソースを注ぎ込んだスタイリング、絢爛豪華な内装、弱点とされた乗り心地の悪さの解消を狙った新設計のシャシー等々。国際線のビジネスクラスのようなシートを2列目に配置した最上級グレード「エグゼクティブラウンジ」の販売価格は実に703万6691円。クラウンの最上級グレードより100万円以上高いばかりか、プレステージサルーンのクラウンマジェスタより高い。「センチュリー」を例外とすれば、アルファード/ヴェルファイアは今や、トップオブトヨタなのである。
その新型アルファード/ヴェルファイアを長距離試乗する機会があった。試乗モデルはヴェルファイアの「HYBRID ZR “G EDITION”」。排気量2.5リットルの直4エンジンを主基としたハイブリッドで、後輪にも電気モーターを備える電動AWD(4輪駆動)である。インテリアはレザーが標準。最上級のエグゼクティブラウンジには後れを取るものの、たっぷりとしたサイズの2列目キャプテンシートを装備。ベース価格は550万円だが、試乗車にはカーナビ、後席用12.1インチディスプレイ、JBLサウンドシステムなどのオプションデバイスが装備されており、それらを加えた価格は645万円であった。