弱点は山岳路での運動性能
車内の静粛性が非常に高いのも、新型アルファード/ヴェルファイアの特徴。もともと大型ミニバンはタイヤやエンジンなど騒音の発生源と客室の距離が大きく、静粛性の確保では有利なのだが、新型はさらに高性能な防音材を多用しているようで、高速道路を速い流れに乗って巡航しているときでもオーディオのボリュームを上げる必要はなく、運転席と2列目シートの間でも小声で会話が成り立つほどだった。
本格的な弱点として挙げられるのは山岳路での運動性能。前述のように、新型アルファード/ヴェルファイアのサスペンションにはかなり柔らかく、かつ大型のラバーが使われていると推測される。それはハーシュネスカットに大きな効果を発揮する一方で、ドライバーに今、クルマがどのように動いているかという情報までカットしてしまう。そのため、コーナーが連続する西伊豆のワインディングロードでは、ステアリングをどれだけ切り足したり戻したりすればクルマが安定的に旋回するかということが掴みづらく、運転者は全然楽しくない。もっとも、アルファード/ヴェルファイアの購入層にとって、そのような道を走るのはリゾートに出かけたときくらいのものであろう。そういう区間は潔く、低速で走ればすむ話だ。運転している実感の薄さの弊害としてはむしろ、高速道路で眠気を催しやすいことのほうが問題になりそうに思えた。
次に動力性能と燃費。新型アルファード/ヴェルファイアのハイブリッドシステムの統合出力は145kW(197ps)。数値的には2.1トン超のボディに対してはアンダーパワーに見えるが、速度域によらず、踏めばほぼ即座に最高出力に近いパワーを出せるため、急勾配の登りのように絶対的なパワー求められるシーンを除けば非力という感覚はない。高速道路への流入のさいの余裕も、比較的パワフルなファミリーカーと同等のものがあった。トヨタのハイブリッドシステムの常として、追い越しのしやすさにつながる中間加速は強力そのものだった。
一般道と高速道路が半々という比率で815kmを走り終えた後、満タン法で燃費計測をしてみたところ、13.1km/Lだった。重量や車の前面投影面積の大きさを考えれば、優秀と言っていい値であろう。一部区間でエコランを試したほかは、むしろ燃費にほとんど配慮しない走り方をした結果の値で、一般のカスタマーが運転してもこのくらいの燃費は期待してよさそうに思えた。
高低差のほとんどない地方都市の市街路でエコランを試したときは、燃費計表示が18km/Lを超えた。高速道路では100km/h巡航だと12km/L前後、80km/L巡航だと15km/L前後になると推測された。苦手なのは、高低差の大きな区間。2.1トンの巨体を標高の高い地点まで運ぶには、どうしても大きな仕事量が必要となるため、燃料をほとんど使わない下りの区間を合わせても燃費の悪化は避けられなかった。