そこで私はまず大胆なコスト削減を行った。園内の3分の1を無料ゾーンにして、力を入れるエリアを区切った。そのうえで集客のヒントを探すために海外のテーマパークやイベントを見て回った。その中で巡り会ったのがリヨンの「光の祭典」だ。

中世の面影を色濃く残すリヨンの冬は、ハウステンボス同様、寒くて暗い。しかし光の祭典が行われる12月初旬の4日間だけは、街全体がライトアップされて幻想的な雰囲気に包まれる。それを目当てに、世界中から400万人もの観光客が訪れるのである。

ハウステンボスの「光の王国」は、リヨンの光の祭典にヒントを得たものだ。光の祭典は01年から開催されているが、そこからアイデアを貰うことで、われわれは10年の歳月を圧縮できたと言ってもいい。もしも冬場のイベントをゼロから自力で考えていたら、短期間での黒字化は難しかったかもしれない。

このように海外の先行事例に学んで時間を圧縮することによって、成果を10倍にも100倍にもできる。振り返ってみれば私がエイチ・アイ・エスを創業できたのも、4年半にわたって世界を放浪したからだ。その旅がなければ、格安航空券が日本に存在しないことに気づくことすらできなかったはずだ。

私はいまでも月に1度は海外に出かける。この海外での見聞が、帰国してからの時間の密度を格段に高めてくれる。オセロゲームはいかにいいポイントに1枚の石を置くかで勝負が決まるが、どこに置けばいいかは常に海外が教えてくれるのだ。

時間管理3カ条
1. 目の前のことより、世界の趨勢をみる
2. できない理由より、できることを探す
3. 会食や講演は必要最低限に絞る
●澤田会長のある1日

06:30 起床
07:00 洗顔、朝食
07:40 自宅出発
09:00 出社
08:30 書類整理
09:00 取材対応
10:00 社内会議
12:00 昼食
15:00 役員会
14:45 社内会議
19:00 退社
19:30 家族で夕食(週1~2回ほど)
21:00 読書、ビデオ鑑賞
24:00 就寝

エイチ・アイ・エス会長 澤田秀雄
1951年、大阪府生まれ。73年旧・西ドイツのマインツ大学に留学。在学中に50カ国以上を訪ねる。帰国後の80年に旅行会社を創業。90年社名をエイチ・アイ・エスとする。96年に航空会社(現スカイマーク)、99年には証券会社(現エイチ・エス証券)の経営に乗り出す。2007年澤田ホールディングス社長。10年ハウステンボス社長。
(山田清機=構成 坂本政十賜=撮影)
【関連記事】
【思索タイム】仕事スイッチを切り替える“朝晩のジョギング” -ヤフー 宮坂 学社長
震災後も売り上げキープした「1.2倍速の法則」 -ハウステンボス社長
すごいアイデアが出る5つの思考テクニック
鈴木敏文「黒字になる発想、赤字になる発想」【1】
売り上げ3倍! “人に伝えたい”商品の仕掛け