ブリヂストンCEO兼会長 津谷正明氏

私が常に意識しているのは、いかに時間の効率を高めるかということです。当社は売り上げの海外比率が8割というグローバル企業なので、CEOの下には毎日のように世界中から課題が集まり、それら一つひとつに決断を求められます。私の処理が遅れれば、その間多くの社員が不安定な状態で半日や1日を過ごさなければならなくなってしまう。ですから、ものごとを効率よく処理し、できるだけ早く結論や方針を出すことが重要なのです。たしかに楽ではありません。でも、そのために高い報酬をいただいているのですから当然だと思っています。

効率化のためには、頭の切り替えが素早くできることも必要です。交渉の席でも、前の気分を引きずってイライラしていたり怒りを抱えていたりしたら、それは絶対に相手にもわかってしまうので、いい結果は期待できません。ですから、ひとつの仕事が終わったら、結果はどうであれ、いったんそこで忘れる。そして、気持ちを平静にして、新鮮な気持ちで次に向かうようにしています。

人と会ったら最後は笑顔で終わるようにすることも大事です。そのために私は、日ごろから笑いのとれるジョークをいくつか用意しておくようにしています。

最近のお気に入りはこの話です。

アメリカの教会に憔悴しきったビジネスマンがやってきて、神父にこう言いました。

「神父様、会社を経営していますが、売り上げが伸びず赤字続きでなにをやってもうまくいきません。この先どうしたらいいのか教えてください」

すると、神父はこう答えました。

「聖書を読みなさい。答えはそこに書かれています」

しばらくして、またそのビジネスマンが教会を訪れました。今度は晴れ晴れとした顔をしています。

「ずいぶん元気になったようですね」
「神父さんに言われて聖書を読んだら、本当に答えが書いてあったので、そのとおりにしたのです」
「答えはどこの章にありましたか」
「第11章(チャプター・イレブン)に」

チャプター・イレブンとは米連邦破産法第11条のこと。これが適用されると債権回収や訴訟が停止されて経営再建に専念でき、再建がしやすくなるので、アメリカでは業績が悪くなると、チャプター・イレブンにより倒産する会社が多いのです。