私はヤフーの3代目の社長です。2012年6月に創業社長の井上雅博(設立社長は孫正義)からバトンを受け取りました。当時、私は入社11年目で、役員では2番目に若かった。後継指名には驚きましたが、時代がパソコンからスマートフォンに移り変わる中、「第2の創業」に挑めることには、興奮を覚えました。
社長就任に際し、私が掲げた目標は、「201×年までに営業利益を2倍にする」。ヤフーは創業以来、16年連続で増収増益を続けていますが、時代の変化をうまくつかむことができれば、利益成長を再加速できる会社だと思っていました。まずはこの1年で、年率3%程度だった利益成長を、10%超のペースに引き上げることができました。
現状の課題は、これからのヤフーを支える「新しい井戸」をどう掘るか、です。ここまでは前経営陣の掘った井戸の水を飲むだけでよかった。同じ経営者の立場になり、井上さんの用意していた戦略の確かさに、たびたび驚かされます。これからは私たち新経営陣が「新しい井戸」を用意しなければいけません。その第一歩が「EC無料化」。ネット通販はこれからも間違いなく伸びる。それを待つのではなく、自ら市場を急拡大させるために、ショッピングモールの販売手数料を無料化しました。一時的に利益は減りますが、利用者が増えることで、結果として大きなビジネスになると期待しています。
新しいヤフーでは、「ユーザーファースト」「スマホファースト」「爆速化」という3つの考え方を掲げました。このうち「爆速化」は誤解されることが多いので、ここで説明させてください。
私は「状況の察知」「意思決定」「実行」の3つを速くしようといっています。このうち改善の余地が大きいのが前の2つです。大企業は往々にして状況の察知が遅い。さらに意思決定の場が週1度の定例会議だとすると、一度遅れただけで1週間の遅れになってしまう。「実行」を縮めるだけだと負担が大きいと思いますが、その手前を縮めることは無理がないと思います。「とにかく速く動けばいい」という意味ではないので、取引先に「『爆速』でお願いしますよ」といわれると励みになる一方で、複雑な気持ちになります。