普段は看板や商品でしか知りえぬ大企業。しかし、たった1枚の紙片から、そこで額に汗する無名の人々のナマの息遣いが伝わってくる――。(※各明細は一部加工してあります。)

“発言問題”で「また削られそう」

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NHKの給与明細

「あの案件で、取材先に『安倍政権の広報機関に話すことは何もない』と言われたりします」――そう嘆くのは、NHKの番組制作現場で働くディレクターだ。

2013年4月、NHKでは役員の年間報酬を最大で前年度比3%カット。職員の基本給を段階的に削減し、2017年度をメドに1割減らすことで労使合意している。そこへ出てきたのが、籾井勝人新会長の従軍慰安婦に関する発言問題だ。

「経営側の『これで削減は終わりになる』という言葉を信じたのに……。また懲罰的に削られそう」(同)

やってられんよ、というボヤキもわからなくはない。社員食堂で大河ドラマの甲冑姿の武将とも席を並べるいかにもな職場環境だが、東京・渋谷から徒歩圏内に住むことが番組制作上必要だという。

独身で月5万5000円、既婚者なら9万円の給付が付くものの、無理して確保した住居の費用はやはり大きい。「しかも、地方局時代に買った車のローンがまだ残ってる」。地方取材で車は絶対必要なのに、なぜ自腹? と嘆き節は続く。

「民放に比べたら、明らかに(年収は)低い。番組の質で負けていることはありえないのに、矛盾を感じます。人付き合いもどんどん増えていくから、生活はずっと苦しいままでしょうね。給料の前借りもしました」