いま日本の財政はすごく改善している

【塩田】アベノミクスの行方が気になります。「3本の矢」のうち、第1の異次元の金融緩和、第2の機動的財政政策は、それなりに効果を発揮していると思いますが、第3の成長戦略はいまだ道半ばで、課題山積です。アベノミクスの成否は成長戦略がカギと見られますが、経済の持続的な成長を図るには、政府は何をすべきだと考えていますか。

【山本】「アベノミクスの成功」は、物価が2%で安定し、完全雇用が実現し、政府の中期的な目標である経済成長率が実質で2%、名目で3%が達成されることです。これができなければ、アベノミクスは成功とはいえない。だから、この目標が達成できなくなるような政策は絶対にやるべきではないというのが私の理解です。

成長戦略は、人によって見方がいろいろと違うから、決め手はないが、何よりも規制緩和と税制改正でしょう。TPP(環太平洋経済連携協定)も早く仕上げる。その路線にいかざるを得ないと思うことが大事でしょうね。法人税改革も必要だと思います。

【塩田】日本は巨大な財政赤字を抱えていますが、その点をどう見ていますか。

【山本】でも、いま日本の財政はすごく改善していると私は言っているんですが、わかってもらえない。日銀が 235兆円も国債を買っていますが、日銀が国債を買ったら、増税する必要がないから、買った途端に、財政負担がなくなる。普通ならインフレになるから許されないが、デフレのときはインフレになるまで日銀が買い入れることができる。

一方で、日本は約650兆円の資産を持っています。だが、債務が約1000兆円あるから、純粋には 350兆円くらいしかない。アメリカとそんなに変わらない。財務省は絶対に言わないけど、そう考えれば、いま財政はすごく好転しているんですよ。

【塩田】国民にとって、政治が果たすべき一番の役割は何だと思いますか。

【山本】政治の最終目的は何かといえば、私は物価の安定と完全雇用と適正な成長だと考えています。それをつねに念頭に置いて、国民生活を守り、豊かにすることにつなげることですね。金融も財政もそれぞれの目的がある。日銀は物価を、財政当局は財政健全化ばかりを考えます。全体を見て、本来の最終目的の達成のためにはどういう組み合わせがいいか、どのタイミングがいいか、その判断は政治家しかできないと思う。

物価の安定、完全雇用、適正な成長の中で、もっとも大事なのは完全雇用です。若者がきちんと仕事を得られることが最重要のポイントです。

【塩田】どうやれば、完全雇用に近づけることができますか。

【山本】物価目標を安定させ、経済を成長させれば、完全雇用に近くなる。若者がいつでも仕事が見つけられるようにする。できれば正規雇用で、安定した生活が確保できるようにする。それが政治家として一番やるべきことです。