農業は立派な成長産業になる!
【塩田潮】2月9日に政府・自民党と全国農業協同組合中央会(JA全中)の農協改革をめぐる協議が決着しました。自民党の農政改革の当事者としてどう受け止めましたか。
【齋藤健(自民党副幹事長・農林部会長)】この日も当初は相当もめるのではという見方もありましたが、日本の農業は大きな曲がり角で、このままでは大変になるという思いは自民党も全中も各県の中央会のみなさんも共有していた。最後はいい形でまとまったと思います。
【塩田】協議で最後まで焦点となった課題は。
【齋藤】全中が一手に引き受けてきた地域農協の監査について、公認会計士の監査を義務付けるという点です。全中の中にある監査機構を外へ出して、公認会計士法に基づく監査法人になる。それから、准組合員の利用規制ですね。
人口減という時代の変化を見すえて、日本の農業が生き残るにはどうすればいいか。1人の人間が食べる量は変わりません。農業が生産だけやっていれば売り上げは減っていく。流通や加工に出ていく。海外にも出ていかなければなりません。農業以外の世界で仕事を増やしていき、今までよりもいろいろな人と付き合うようになる。そのとき、監査は農協監査士という特別な人がやっているのではいつまでも持たない。誰が見てもしっかり監査が行われているという態勢をつくる。海外に強い経営コンサルタントなどと組んで新しい展開をするのも可能になる。これからの時代に必要なものを、先手を打って整備をしているわけです。
日本の農業は従事者の平均年齢が66歳で、耕作放棄地が増え、後継者はいないという状況ですが、「伸びしろ」のある産業でもあります。私は通産省(現経済産業省)時代、いろいろな産業界を担当しましたが、このままではジリ貧だけど、やり方次第で「伸びしろ」が大きい農業のような産業はそうはない。曲がり角のこの数年間に、意識改革も含めて、きちんとやっていけば、立派な成長産業になる。そのためにいろいろな改革を推し進めてきて、最後に残ったのが農協でした。
【塩田】「伸びしろ」というのは、価格競争力で劣っていても、日本の農産物や食料は品質が高水準で、国際的にも潜在的な競争力や成長力を備えているということですか。
【齋藤】そうです。日本の自動車や醤油が世界で売れたのは、自動車会社や醤油会社の社員が海外で懸命に売り歩いたからです。だけど、たとえば日本のいちごを海外の店頭で食べさせるなんて、やっていない。大企業では社員を派遣できますが、日本の農家はできません。では誰がやるのか。それをやるのは農協ではないでしょうか。
安倍晋三首相が「成長産業化する」と言っているのは、「伸びしろ」があることを確信しているからだと思います。首相が言い出して、若者の新規就農が増えた。生産だけでなく、販売、流通にまで手を広げていけば、相当の可能性があることにみんな気づき始めました。農協にも農水省にも気づいてほしい。われわれ政治家ももっと気づかなければ。