憲法改正は来年夏の参院選後に

【塩田潮】2カ月前の2月4日に首相官邸を訪ね、安倍晋三首相と会談したと報じられました。憲法改正案の国会による発議とその後の国民投票の時期について、来年夏の参院選の後にという話で、安倍首相は「それが常識的」と言ったとニュースになりました。

【船田元(自民党憲法改正推進本部長)あれは非公開の会談でしたが、実質は公開みたいな形になってしまいました(笑)。いよいよ憲法改正の具体的な中身の議論がこの国会で始まる状況になったので、安倍首相が自民党総裁として、憲法改正の中身、タイミングをどう考えているか、2点を確認したいということで、お願いしてお会いしました。

【塩田】安倍首相はその2点について、どういう意向を示したのですか。

船田元氏(自民党憲法改正推進本部長)

【船田】第1の憲法改正の内容については、環境権を始めとする新しい人権の追加、緊急事態における措置、財政規律条項など、私からいくつかテーマを挙げて申し上げました。各党で自由討議をしたとき、共産党と社民党を除き、憲法を変えたいという党が共通して言及していた点なので、そこから改正したいと話をしました。それに対して、それでいいとか悪いとかはおっしゃらず、すべて国会の議論に任せるという回答でした。

第2のスケジュールの点では、われわれを応援して下さる立場の方々から、来年の参院選に合わせて国民投票を、という声が昨年の秋くらいから出ていたんです。それはいかにも早すぎると思い、国会による改正案発議も国民投票も参院選の後ですね、と確認したかった。それを申し上げたところ、「それが常識的だね」という返事をいただいた。

【塩田】去年の1月から保利耕輔氏(元文相。現役引退)の後任として自民党憲法改正推進本部長をお務めですが、ご自身の憲法改正に対する基本的なお考えと姿勢は。

【船田】学生時代から、現行憲法の第9条について、自衛隊の存在すらも解釈でようやく成り立っているのはおかしい、独立国家としてきちんとしなければ、と思っていました。今も第9条の改正が憲法改正の1つの柱であり、肝であると思っています。その後、いろいろと憲法の中身を研究していくうちに、ほかの部分でも当然、改正すべき点、現状に合わなくなった部分がいくつかあるとわかり、総合的に議論するようになりました。

【塩田】この10年間で、自民党は、いずれも憲法改正推進本部が中心となって、小泉純一郎内閣時代の2005年に「新憲法草案」、2012年の谷垣禎一総裁時代の「日本国憲法改正草案」と、2回、憲法改正案を策定しています。両方とも憲法の全条項を対象とした全面改正案ですが、これから議論するに当たって、なぜ限定的な案を想定するのですか。

【船田】大前提として、国会法で「憲法改正原案の発議に当たっては、内容において関連する事項ごとに区分して行うものとする」(第68条の3)と決められていて、憲法改正は何回かに分けて行うことになります。国民投票法(日本国憲法の改正手続に関する法律)を決めるとき、国会法も改正して付け加えた。1回で全条項の改正をやるのは物理的に無理だから、何回かに分けて、ということです。

われわれも国民投票する国民のみなさんも初めての経験です。もちろん第9条が大事ですが、1回目からこれを扱うと、なかなか厳しいだろうということがあります。1回目で仮に国会が第9条改正を発議して、国民投票で否決される事態が起これば、多分、憲法改正は政治的にはしばらくできないでしょう。第9条以外に改正したいところがありますから、第9条改正は2回目以降にして、それ以外で、多くの政党、国民が賛成する項目から取り組んでいくのが現実的な対応ではないかと思います。