私益よりも公益、国益を重視する
【塩田】非常に難しい時代ですが、現代の社会で、政治は国民に対してどういう役割を果たさなければいけないと思いますか。
【船田】世界の中での日本の役割、日本がやるべき仕事を、政治がきちんと見つけて、そこを伸ばしていくのがとても大事だと思っています。
【塩田】その場合の政治家の使命と条件は。
【船田】私益よりも公益、国益を重視する。私益を捨てる覚悟も必要というのが政治家の要諦ですね。
【塩田】政治リーダーは条件とどんな資質を備えていなければいけないと思いますか。
【船田】冷静さ、大局観、自らを捨てる覚悟の3つです。
【塩田】政治家としてこれだけは、という達成目標は何ですか。
【船田】やはり憲法改正を少なくとも1回はやりたい。もう1つは日本の科学技術です。基礎研究は優秀ですが、応用のところに行かない。「死の谷」とか言われています。応用までつなげて、科学技術で日本が世界をリードし、優位に立てる状況をつくりたい。
【塩田】長い政治生活で、今までで一番嬉しかったことは何ですか。
【船田】憲法改正手続に関して、投票年齢を「20歳以上」から「18歳以上」に引き下げましたが、公職選挙法改正をプロジェクトチームの座長としてまとめることができたのが非常に嬉しかった。もう1つは11回、当選したこと。続けられたということです。
【塩田】逆に一番苦しかったことは。
【船田】それは逆に2回、落選したことです。落選すると、要するに歯車が全部、逆に回る。いわゆる名誉がずたずたになる。落ちると、「ただの人」以下です。人間として、全部、剥奪された上、ゼロじゃなく、結局、マイナスになる。
落選を経験すると、自分の考えだけですべてが動くなんてことは全然ないとわかりまして、人の話をちゃんと聞いて、妥協できるときは妥協しよう、と。そういう意味で、度胸が据わったというか、柔軟になったというのは、落選のお陰かなと思っています。
衆議院議員・自民党憲法改正推進本部長・元経済企画庁長官
1953年11月、宇都宮市生まれ(現在、61歳)。栃木県立宇都宮高校、慶応義塾大学経済学部卒。25歳で79年の総選挙に旧栃木1区から出馬して初当選(以後、2回の落選を挟んで当選11回)。曾祖父の元田肇(元衆議院議員、元鉄道相)、祖父の船田中(元衆議院議長)、父の船田譲(元栃木県知事、元参議院議員)に続く4代目の世襲政治家。初当選後、慶大大学院社会学研究科修士課程修了。宮沢喜一内閣で経企庁長官を務め、93年に自民党を離党して新生党の結党に参加する。新進党に参加した後、97年に自民党に復党。自民党憲法調査会長、憲法改正推進本部長代行などを経て、2014年1月から本部長。夫人は元参議院議員の畑恵(現船田恵)。著書は『日本をよくする本―将来世代を重視する政策ノート』『政界再編』。「学問をすることの大切さを明確に示した」と福沢諭吉を尊敬。時間があればやりたいと思うのは「ロードバイクと天体観測」と話している。