三つの原則は絶対に変えない
【塩田】国民主権、平和主義、基本的人権の尊重は、現行憲法の基本原則で、国民に支持され、広く定着していると思いますが、基本原則の見直しも含めて議論するのですか。
【船田】これから衆参の憲法審査会の中で議論をしていくことになりますが、ここは改正していけないという、いわゆる「改正の限界」もあると思います。保岡興治・衆議院憲法審査会長はそこを非常に重視していて、三つの原則は変えない、と。各党で確認する必要がありますが、三つの原則は絶対に変えないことという点では、各党とも間違いなく共通だと思います。
【塩田】安倍首相は昨年12月の総選挙で、憲法問題を国民に訴えるべきだったのでは。
【船田】第96条の件がトラウマになっていたので、中身について自分が言うとうまくいかないとお考えになって、あまりおっしゃらなかった。自民党としては、草案はすでに示していますので、説明はしてもよかったと思いますが、これで改正すると言えば、国会での各党との議論を縛り、抑制してしまう。ほかの党は、自民党が勝手にやればいいということになり、3分の2を超えられなくなる。総選挙でのわが党の公約、総裁の演説などは、私は妥当だと思っています。
【塩田】これから2016年の参院選までに衆参の憲法審査会でどんな議論をするのですか。
【船田】変えるならどこを変えるか、項目を絞り込んで各項目についてどういう条文にするかという議論はしたいと思っています。ただ、来年の参院選前の通常国会で原案ができるかどうかは、ちょっとわかりません。
【塩田】来年の参院選で改憲案を示し、参院選後に発議すると国民に訴える計画ですか。
【船田】参院選で改正原案を示すことはちょっと考えにくい。衆参で3分の2を超える人に賛成をしてもらわないといけない。参院選で、わが党はこう直す、と勝手に言われると、まとまらなくなる。憲法改正を争点にするのは、考えられないし、考えたくない。
【塩田】国政選挙で憲法問題について国民に訴えることは必要ではないかと思いますが。
【船田】それは必要です。ただ、憲法改正に賛成の政党は同じことを言わざるを得ない。そういう意味で、説明をする機会にはなりますが、国民がどの政党を選ぶか、どういう人を選ぶかというとき、憲法の中身の問題を判断の材料にすることはないと思います。
【塩田】憲法改正案の発議の前、参院選と同時に衆議院総選挙も行って、憲法改正を論点にして国民に信を問うべきではないかという意見もあります。
【船田】衆議院も参議院も、選挙は政党や人を選んだり、政権を選ぶのが目的ですから、その政治選択と憲法改正を一緒にやると、議論がおかしくなってしまう。憲法改正の国民投票は、本来は別にやるべきです。国民投票にかけるべきものを参院選や総選挙のときに判断させるのは、違うのではないかと思いますね。