制度や仕組みを選ぶのはわかりにくい
【塩田潮】5月17日の大阪市民による住民投票で、橋下徹大阪市長(維新の党最高顧問・元代表)が推し進めてきた大阪都構想が約1万票差という僅差で否決されました。
【片山虎之助(維新の党総務会長・参議院議員会長)】私は僅差で勝つのではないかと思った。結果が出た後の橋下さんの記者会見は、爽やかで、潔い感じを与えましたね。
【塩田】勝てなかった原因は。
【片山】都構想のメリットがピンとこなかったのでは。人ではなく、制度、仕組みを選ぶ選挙はわかりにくい。自民党から共産党までの反維新連合軍との戦いで、共産党や公明党は足腰があり、動員力もありました。こちらも相当、動員したが、ちょっと足りなかった。
首都圏への一極集中を打破して多極分散にするには、まず2極にする。大阪、神戸、京都、それに私の出身の岡山あたりまで入れて、大きいもう一極の圏をつくる。それに、大阪府と大阪市は区域が大きく重なって二重行政となり、その分無駄が大きい。それをなくそうという橋下さんの主張は説得力があったけど、わかってもらえないとダメですね。
【塩田】橋下さんは記者会見で政界引退を表明しました。
【片山】これまた爽やかすぎる。私は今年の初め、住民投票に勝つという前提で、「国政に出てもらえれば異変が起こり、政治が変わる。見渡すと、異変を起こせるのはあなたぐらいしかいない。松井一郎大阪府知事と2人で来年の参院選に出てほしい。与党でも野党でもない是々非々の『ゆ党』が増える。面白いじゃないですか」と勧めましたが、橋下さんは否定しなかった。その気があったと思いますけれども。本人は前から街頭演説でもテレビでも「負けたときは辞める」と言っていましたが、みんな勝てると思っていたから、本気で受け止めていなかった。だけど、記者会見であれだけはっきり言うと、状況がかなり変わるとか、みんなで引き出すお膳立てができなければ、なかなか難しいでしょうね。
【塩田】橋下さんはなかなかの戦略家で、変幻自在なところがあるように見えます。
【片山】希有の政治家である橋下さんに強い期待を持っている人は多い。私もその一人です。この前、堺屋太一さん(作家・元経済企画庁長官)と会ったとき、「もう一回、出てもらおうじゃないか。いつか本人に2人で言おうじゃないの」という話になりました。ですが、今すぐというのは、なかなかねえ。
【塩田】片山さんは橋下市長とは、維新と旧太陽の党の合流時からの付き合いですか。
【片山】大昔、テレビに出たときにすれ違ったりということはありました。私は小泉純一郎内閣の頃、自治相や総務相を3年やりまして、そのときも接触はあった。もともと軽妙で、トーキングはなかなかのものだと思いましたが、今のように変わるとは思いませんでした。あの人は会うたびに成長しています。大阪府知事になって、政令市の市長は知事より権限があり、知事ではできることに限界があるとわかった。大阪市長が言うことを聞かないなら、自分がなろうと思ったんです。