消費税率引き上げをやるべきだと言った
【塩田潮】安倍晋三首相は2014年暮れ、消費税率10%実施を延期するには国民の信を問わなければ、という言い方で総選挙をやりました。この選択をどう受け止めましたか。
【野田毅(自民党税制調査会長)】現に解散になり、引き続き圧倒的多数を獲得して、国民から支持を得たという意味では、自民党にとってよかったと思います。ただ消費税の問題は、自分の考え方をはっきりさせておくことが大事だと思っていますから、予定どおり税率引き上げをやるべきだと言った。だが、総理が自分で決断して結論が出た以上は、組織として、それがまずかったということにならないようにしなければいけない。その後の経済や財政にはその分だけ余計に負荷はかかっていると思いますが、それを乗り越えて、組み立てをどういうふうにやり直すかが私の仕事になっています。
【塩田】首相が税率引き上げの延期や解散・総選挙を決断する際に、党税調会長の意見を聞くとか、首相が税調の人たちを説得するということはなかったのですか。
【野田】直接にはありませんが、匂いは周りから伝わってきましたね。消費税率引き上げのタイミングについては、市場の動向もありますから、総理には別の違う考え方があるかも、と私も思っていました。もう一つ、解散時期は、経済の動向だけでなく、自民党総裁としての再選戦略や来年の参院選など、さまざまな事柄を頭に置いて判断するわけです。可能性は極めて少ないと見ていましたが、年末の総選挙というタイミングもあり得た。後からたどってみると、夏頃から頭にあったのではないかと思います。
【塩田】首相から税調に、消費税率引き上げ延期の理由や根拠、これからの展望などについて、説明がありましたか。
【野田】ないです。決まったら、それでやるしかない。後は「よろしくお願いします」ですよね。ただ、解散を決断し、実際に解散を行う直前に、年内に税調で税率引き上げの延期に基づいて平成27年度の税制改正の大綱を取りまとめてほしい、という話はありました。総選挙は当然、勝利するという前提です。ということは、私の税調会長留任を内々に言ってきたことになります。選挙が終わった後、関係の部会長とか、関連する人事がいろいろあり、税調だけ決めるわけにいかないので、私は若干、留保付きで「それは努力しますが、今から確約はできません」と申し上げた。
【塩田】昨年の総選挙で、年齢制限を理由に、野田さんを自民党の公認から外すという動きがあったと報じられました。
【野田】解散の前に大綱の取りまとめを要請したのは、私が当選して税調で年内にやるという話ですから、総理は公認を外すなんてことは毛頭考えていなかったということでしょう。総理ではなく、ほかの人たちが牽制しようとした。そんな話を流して、私を牽制するだけでなく、ほかの政策でも、首相官邸の方針に従わないなら、厳しく対処するぞというメッセージに使ったということじゃないでしょうか。総理にとってはマイナスになったと思います。そんな傲慢なやり方は、決していいメッセージではなかった。