日本は世界的には圧倒的に「小さな政府」
【塩田】17年4月に消費税率を10%に引き上げれば、財政再建計画には間に合いますか。
【野田】目標の基礎的財政収支(プライマリーバランス)の20年の黒字化は大変厳しい状況です。頭が痛いのは「2020年」が最終目的地ではないということです。高齢化はもっと進む。20年の目標はほんの一歩です。その先、75歳以上の人口が大幅に増え、15歳から65歳の労働力世代の人口が激減する。医療費の額も桁違い、要介護、認知障害の認定率も何倍にもなるけど、どんどん増税すればいいという話ではない。もっと高い山があることを頭に置いて、その先、どうやって元気に登り切るか。このテーマは、早く着地をすればするほど、山は低くなる。延ばせば延ばすほど、山は高くなります。
【塩田】安倍首相は「消費税率は10%以上にはしません」と発言しています。
【野田】それは「自分の内閣の間」という意味でしょう。逆立ちしたって、未来永劫10%というのはあり得ない。その覚悟で行きたいということであって、公約にはなっていませんよ。「経済の再生と財政再建の二兎を追う、そして必ず二兎を得る」として公約しています。
【塩田】今年6月、10%への引き上げ実施前の財政再建プランを用意する予定ですね。
【野田】税率引き上げ延期を決めたとき、併せて20年のプライマリーバランスをどうするかがワンセットでしたから、6月にはちゃんと示します。世界は公約的に見ているわけです。それがないと、日本に対する信認が傷つくかもしれない。税率引き上げから逃げて財政規律がおかしくなれば、日本国債の格付けに対する世界の評価がおかしくなる懸念がある。延期しても、20年黒字化の目標は引き続き達成するとすでに宣言している。そのための財政再建の具体的シナリオを6月には取りまとめる。党のほうでも政調会長を委員長にして、財政再建に関する特別委員会をつくって勉強している状況です。
【塩田】過去には、財政再建のために行政改革で歳出削減をと言ったこともありました。
【野田】削るべきところは相当削って、限界にきているのでは。一方で、削りすぎて、日本の国力を損なっているとか、成長の足を引っ張っているという現実もある。統計を見ても、日本は世界的に、社会保障費を除く分野では圧倒的に「小さな政府」です。国民の支持があって成り立つのが政治ですから、国民も自分のこととして一緒に考えてほしい。国民合意をどういうふうにつくっていくか。人ごとではないんです。
本質的なのは人口問題。「早く結婚しろ」「子どもを産め」といっても相当時間がかかる。待てないなら、どうするか。一つは、移民を認めて支えることにするかどうか。文化的な問題があってうまくいかないという制約をどう乗り越えるか。もう一つ、女性やリタイアした人の活用を懸命に政策として打ち出しているけど、確立していません。本当に確立するなら、そういう社会づくりを本気でやらなければいけません。だけど、実はそれでも消費税率を30%くらいにしないと数値が合わない。そんなことできるわけない。