野党が再編されていないことが問題
【塩田】もう1つの国民投票での「民意の壁」は。
【船田】それは大変ですね。でも、国会で3分の2を超える状況になれば、賛成した党の組織の中で当然、運動が展開されるはずです。私自身は心配していません。現在の世論調査の数字は、憲法改正の是非を問う設問に第9条への賛否が入っていたり、自民党の憲法改正草案を念頭に置いて、そういう方向の憲法改正に賛成かどうかという聞き方が多い。そうなると、拒否反応や懸念は国民の間に当然ある。1回目の憲法改正の中身となるテーマを明確に示した上で改めて世論調査をしてもらいたいと思っています。
【塩田】安倍首相は今年9月の総裁選で再選すると、2018年9月まで任期があります。そこまでに必ず1回目の国民投票を、と考えていて、「常識的」と言った来年の参院選後の16年後半から17年に発議、国民投票を想定していると見られます。1つ気になるのは、17年4月の消費税再増税との関係です。次は増税法に景気条項は付きませんが、それでも16年の秋から暮れに最終的な政治判断が必要になります。その時期が憲法改正案の発議と重なり、もしかすると増税実施の前後に国民投票となるかもしれません。その影響は。
【船田】それは仮定の議論です。変動要因もあるので、一概には言えません。ただ消費税再増税の問題と憲法改正の話は、できるだけ絡めずに議論していきたいと思っています。
【塩田】憲法以外のお話をお聞きしたいと思います。1990年代に自民党を離党し、二大政党政治の実現を目標に、新生党、新進党と歩んだことがありますが、現在の「一強多弱」の状況を見て、政党政治の現状、民主主義のあり方について、どう受け止めていますか。
【船田】「一強多弱」は、基本的に今の衆議院の選挙制度の結果としてそうなったのではないと思います。制度ではなく、運用の問題です。特に自民党が勝っているのは、われわれからすれば、野党のみなさんが各党の主張を曲げない、あるいは狭い考え方で運営しようとしていて、それで割れて、野党が再編されていないという状況こそ問題です。
二大政党政治、政権選択選挙でいくには、野党のみなさんが自民党に対抗できるもう1つの新たな政党をつくる方向で努力しなければ。政権交代は2009年の総選挙で1回起こりましたから、起こらないということはない。今後もあると思います。
【塩田】振り返って、新進党の運動が不発・空中分解に終わったことをどう思いますか。
【船田】最初から寄せ集めでしたね。基本政策において、各党がもともと持っていたものを捨て去って新しいものをつくるという努力を、しようと思ったけど、できなかった。それだけの能力がなかったと言わざるを得ませんね。民主党も基本的な考え方、政策においてさまざまなものが残っていますので、その危険性があります。よそのことは言えないけど、自民党だって、それはあります。でも、自民党はいざというときにまとまります。
【塩田】なぜ自民党はいざというときにまとまるのですか。
【船田】割と物の考え方が柔軟です。それからいろいろな分野から人が集まっている。出身が非常に多様化しているんです。それから、憲法第9条の話ではありませんが、国としての安全とか緊急事態における対応には、個々の考え方の違いを乗り越えて協力しようというモチベーションや発想が自民党にはあると思います。