新しい世代が出てこなかった民主党の限界

元民主党幹事長 細野豪志氏

【塩田潮】民主党の野党転落から1年10カ月が過ぎました。国民の評価は今も低く、党再生は容易ではない感じがします。民主党政権の「失敗」からどんな教訓を得ましたか。

【細野豪志(元民主党幹事長)】政策面で明確な反省点がいくつかあります。一つは安全保障です。米軍普天間基地移設問題を始め、現実的な対応ができませんでした。政権を担ったとき、政策課題の優先順位をどう付けるかが大きな判断になります。民主党政権は予算の組み替えなど、内政での改革が最優先の課題であったにもかかわらず、最初に外交に走ってしまいました。日米同盟も重要ですし、沖縄の問題も慎重に進める必要がありました。初めから安全保障の問題で大勝負する、あるいは大きな政策の転換を行う状況ではありませんでした。そういう意味でも判断を誤りました。

もう一つは経済です。民主党は医療や介護などで雇用と所得を増やして経済をよくすると主張していましたが、成長戦略をどう描いていくかについて、知恵が足りませんでした。この2つの点で転換しない限り、われわれには政権は回ってこないと思っています。

【塩田】民主党政権で鳩山由紀夫、菅直人、野田佳彦の3氏が首相を務めました。

【細野】もっと新しい世代が出てくるべきだったと思います。個別の政策では党内にいろいろな違いがありますが、大きな懸案を乗り越える知恵がありませんでした。ばらばらになりそうなとき、結束させるような人間関係もつくれていませんでした。議員の側のフォロワーシップも不可欠ですが、リーダーシップも重要で、党をまとめ切る力量が執行部にありませんでした。新しい世代が出てこなかったのが民主党政権の一つの限界だったと思っています。

【塩田】代わって安倍晋三首相が再登場しましたが、「安倍政治」をどう見ていますか。

【細野】自民党は野党時代に民主党政権に対して攻撃を加えてきた結果として、相当、右に寄ったのではないか、多様性や柔軟さが失われたのでは、という点が気になります。

安倍政権が進める政策には、心配な部分が出てきています。一つは経済です。リフレ政策に本当に出口があるのかどうか。アベノミクスの限界が露呈し、相当危ない状況になってきているのでは……。それを乗り越えるだけの材料を出せるかどうかだと思います。

もう一つは地方の問題です。基本的に分権を推し進めて地方に権限を渡すしかありません。ところが、安倍政権は集権的に政策を進めようとしています。

われわれはアベノミクスの影の部分にしっかり光を当てる。どうやってうまく盛り上げる方向にいくかです。

【塩田】安倍首相は外交では独自の「価値観外交」を唱えています。

【細野】安倍政権の外交が順調にいっているかどうか、厳しく見ていく必要があります。「価値観外交」については、諸外国はその色を感じていると思います。ある種、価値を押し付けてくるところがある。その姿勢は内政にも外交にもありますね。