安倍首相は表現力豊かで、話がわかりやすい

内閣官房副長官 加藤勝信氏

【塩田潮】自民党では安倍晋三首相とは派閥が違って、額賀派(前身は田中派、竹下派、小渕派、橋本派)の所属ですが、派閥を越えて第2次安倍内閣で内閣官房副長官に起用されました。なぜ「首相側近の指定席」といわれる官房副長官に。

【加藤勝信(内閣官房副長官)】それは安倍総理に聞いてもらわなければ(笑)。もともと私の岳父の加藤六月(元自民党政調会長。元農相)と総理のお父さんの安倍晋太郎さん(元自民党幹事長。元外相)は兄弟みたいな付き合いで、私の結婚の仲人も安倍晋太郎さんでした。そういうご縁もありますが、それ以上に、2012年9月の自民党総裁選で安倍総裁実現に向けて一緒に努力をしてきたというつながりが大きいかもしれませんね。

【塩田】トップリーダーとして、どこが安倍首相の持ち味だと思いますか。

【加藤】表現力が豊かです。話が非常にわかりやすい。外国でのスピーチもユーモアがある。用意してなくても、笑わせることができるような話を自分で組み立てられる。海外にご一緒しますから、そのへんは強く感じます。それから、明確に指針を出して話しています。急ぎすぎとか、いろいろ言われますが、物事は決めるときは決めていかなければいけない。そういう意味で非常にはっきりしている政権だと思いますね。

【塩田】安倍首相、菅義偉官房長官、それに加藤さん、世耕弘成さん(参議院議員)、事務の杉田和博さん(警察庁出身。元内閣危機管理監)の3人の官房副長官という現在の首相官邸の体制は、内部にいて、うまく機能していると受け止めていますか。

【加藤】内閣全体のいろいろなものが、結節点である菅長官のところに入ってくる。調整が必要な問題はそこできちんとやっていくという形で、うまくマネジメントされていると思います。各大臣もよくわかって対応されている。第2次安倍内閣発足後、 600日以上、大臣の交代がなく、誰一人、欠けることなく続いてきた要因の一つだと思いますね。

【塩田】菅官房長官の「内閣の大黒柱」としての手腕をどう見ていますか。

【加藤】勘所が素晴らしい。判断が的確ですね。政権が発足して、最初にアルジェリア人質事件にぶつかった。13年1月にテロ組織がアルジェリアの天然ガス精製プラントで引き起こした人質拘束で、日本人も多数、犠牲になった事件です。あのとき、安倍総理は外遊中だった。危機管理が問われた最初の出来事でしたが、留守を預かっていた菅長官は冷静、的確に対応されたと思いましたね。

【塩田】菅さんとは、いつから、どんなきっかけでお付き合いが始まったのですか。

【加藤】今はほとんど毎日のように会っていますけど、安倍総裁が実現した12年の総裁選を同じ安倍陣営で一緒に戦ったのが始まりで、お付き合いはまだ2年くらいです。

【塩田】安倍内閣の3人の官房副長官の役割分担は。

【加藤】事務と政務の副長官は基本的に役割が違っています。世耕副長官とは、国会があるときは衆議院側は私、参議院側は世耕副長官が担当する。それから世耕副長官はもともと広報の仕事をやっておられるので、その関係は担当するという分担になっていますが、分担は基本的に決めていません。最初、分担を決めなければ、という議論もありましたが、決めると縦割り、まさに役所的になってしまう。何かあれば話し合ってということでやっています。私は社会保障をずっとやってきましたが、だからといって、副長官として私が独占的にやる必要性はなく、官邸はさまざまな観点から対応していくことが求められていると思いますね。