女性登用の決め手は何か

【塩田】女性の登用については、日本は他の先進国と比べて国家公務員の分野での女性の活用が遅れているという指摘もあります。どうやって壁を取り払っていくのですか。

【加藤】女性の採用を30%にという目標は、かなり近づいています。ですが、入省後、結婚して出産というところで子育てと仕事を選択しなければならない状況になってしまう。その選択をしなくて済む状況をどうつくっていくか。一つはキャリアパスの問題です。育児休業を取ると、同期の男性と比べてどうしても遅れる。その問題をどうするか。もう一つは、復帰後も子供が小さい間は同じように働けない。フレキシブルな働き方をどうするか。

それ以前に、男女に関係なく、夜中の1時や2時まで働くというのは異常じゃないですか。そこをどう改善するか。6月26日に霞が関の女性官僚の方々から「働き方改革」という形で提言をいただいたが、女性の働き方だけでなく、霞が関の働き方を変えていく。30%を超えて女性を増やしていけば、働き方を変えざるを得なくなると私は思いますけど。 長い時間、働いていることが仕事熱心と見られる面がありましたが、時間当たりでどれだけのパフォーマンスができているか、そこへ評価の基準をシフトしていかなければ、と思います。

【塩田】これからの時代、官僚には何が求められますか。あるべき官僚像とは。

【加藤】本質の部分は昔も今も将来も変わらないと思います。基本的には、まずわれわれ政治家の側がきちんとした方向性を出していく。それに向けて個々の行政を役所の中で一つ一つ具体化していく。もう一つは、判断するに当たって、当然、情報や分析が必要ですから、それを提供していく役割が求められています。

一人一人、幅広い視野を持つことが重要ですね。霞が関の視点と国民の視点が違っているのでは、とよく言われますが、国民的な視点に立つことも必要でしょう。国際化という視点も不可欠です。時代がどんどん変わっていくから、弾力性のある視点の人を採用し、育てていくことが必要になってくる。そのためには、役所の仕事を魅力あるものに、仕事のしがいがある形にしていかなければ。それに沿った改革だと私は思う。

【塩田】安倍内閣は7月1日に集団的自衛権の憲法解釈変更を閣議決定しましたが、関連法案の整備は来年に先送りしました。今年後半は拉致問題、原子力発電所の再稼動、成長戦略の仕上げ、消費税率再引き上げの判断など、大きな政治課題が控えています。

【加藤】まず拉致問題は、北朝鮮側の特別調査委員会の立ち上げがあって、夏の終わりか秋頃に報告があるということですから、それを踏まえ、一日も早く拉致された方やそれ以外の特定失踪者が帰国できる状況をつくりたい。原発の問題は、原子力規制委員会が厳しい基準をつくってチェックを進めていますから、それに則って対応していくことになります。

安全保障や集団的自衛権の問題に注目が集まっていますが、従来からの東日本大震災からの復興も重要な課題です。政権としてはデフレ脱却と経済の再生が一番大きな柱です。今回の成長戦略で、大胆に打ち出しましたので、それを実現すべく対応していく。打ち出したテーマの中で法律化して進めなければならないものはどんどん進める。安倍内閣になって、風景が変わってきたと言われている経済の流れを、実態が変わってきたという形にしていく。それに全力を挙げるのが安倍政権の基本だと思いますね。

消費税の税率再引き上げは、来年度予算との兼ね合いがありますから、今年の場合は遅くとも年末までには判断しなければなりません。11月になれば、7~9月期のQE(四半期ごとに内閣府が公表する国内総生産の推計の速報値)というマクロ経済の一つの指標も出てきます。それらを見ながら判断していくことになると思います。法律上は、来年10月から10%に上げることを前提に、経済情勢を見極めて判断するということになっていますから、その判断は12月ということです。