内閣人事局が司令塔機能を発揮する

【塩田】5月30日に内閣人事局が新設されました。内閣が国家公務員の幹部人事を一元的に管理するが一番の目的といわれ、人事管理に関する戦略的中枢機能を担う組織で、加藤さんが初代局長に任命されました。首相官邸で官僚組織を束ねる役割の事務の杉田副長官が就任するのでは、と見られていましたが、なぜ加藤さんに。

【加藤】マスコミが書いた段階で、杉田さんに決まっていたわけではなかったと私は思います。新設の内閣人事局をどういう形で運営していくかという議論があり、国家公務員制度改革の流れを踏まえて、やはり政治が主導する形がいいのでは、という観点から、政務の副長官が内閣人事局長になるのがいいということで決まったのではないかと思います。

【塩田】加藤さん自身も官僚出身で、国家公務員の人事制度に明るいと思います。今回の制度改革の最大の狙いは。

【加藤】この制度が導入される前から、実際は国家公務員の幹部人事は官房長官と副長官のところで行う検討会議で決めていたという流れがありました。今度は 600人を対象にと幅を広げた。それだけでなく、定員と機構も内閣人事局の管理下に置くことにした。この省は何人にして、どういう組織にするか。級別定数といって、簡単に言えば局長は何人、審議官は何人、といった点を全部、一元的に内閣人事局で管理する。国民の期待に応えられるように政府の体制そのものを弾力的、戦略的に動かしていこうという趣旨です。

【塩田】過去の仕組みではうまくいかなかったところがあるわけですね。

【加藤】これまでは定員・機構は総務省、級別定数は人事院、幹部人事は、ある部分はそれぞれの役所というふうに、ばらばらでやっていた。縦割りで、政府として一元的に一つの方向を打ち出して、それに向かって形を変えていくのが困難な面がありました。今度は一元化によって時の課題に応じて変えていくことができます。

【塩田】内閣人事局誕生までの軌跡を振り返ると、第1次安倍内閣時代から、内閣人事庁構想などを経て、08年6月に福田康夫内閣の下で一度、法案の成立・公布・施行まで漕ぎ着けながら、麻生太郎内閣で設置断念・先送りとなるなど、紆余曲折の後にやっと発足しました。なぜこんなに時間がかかったと思いますか。

【加藤】確か3回、国会に法案が提出されて、廃案になり、4度目の正直で実現しましたが、一元化を含めて、制度を変えようとするなら、どういう形がいいのか、議員の中でも議論があったし、役所の側もそれぞれの思いや意見があったということですね。

【塩田】一言で言えば、各府省や人事院など官僚組織の側の大きな抵抗と、それに影響を受けた政治の側の迷走も、決着を長引かせた原因だったと見られますが、加藤さんが言う「役所の側のそれぞれの思い」というのは具体的にはどんな事情ですか。

【加藤】政府がやろうとしていることも、これまでは各役所の要求に応じて政府全体としては受け身的に対応する面があった。これからは各パーツがバラバラで動くのではなく、内閣人事局が総理、官房長官の下で、政策課題に応じて中心的な司令塔機能を発揮してやっていきます。

【塩田】新制度は初めが肝心です。初代局長としてどういう方針で取り組みますか。

【加藤】新たな発想に立ってやっていくのですから、内閣人事局の職員のみなさんに申し上げるのは、これまでそれぞれの組織で同じような仕事をしていたけど、考え方を整理して、白紙の中にものをつくっていくという発想でやってほしい、と。いままでの形が本当にあるべき姿なのかどうか、そういう検討を重ねる中で物事を進めていってほしい。