泥をかぶり、汗をかく人が少なかった

【塩田】民主党は政権獲得まで、国民の期待感を醸成し、拡大して、それを政権交代につなげました。それが今、全部壊れてしまったような印象ですが、民主党は国民の期待感をどうやって再構築するのか、そこが最大のポイントでしょう。

【細野】これまでの民主党とは変わったのだというところを国民に示さなければと思います。上っ面だけではダメで、政策面や国民からの見え方なども重要です。

【塩田】『中央公論』10月号所収の「わが民主党改革宣言」(細野豪志・寄稿)の中で、党内の結束力の問題について、「自民党がいざという時にまとまれるのは、人間関係をつなぐ『紐帯』が残っているからだ。民主党には、そうした人間関係を『しがらみ』として避ける傾向がある」と書き綴っていますね。

【細野】私自身は、政権から転落し、その後に役職も辞任をして、意識的に自分を変えています。グループをつくり、苦手だった資金集めも始めました。

もともと私は、性格的には人との付き合いや人間関係、友人や地元の選挙区のみなさんとの関係などもウェットなほうですが、国会議員はお互いに一国一城の主ですから、議員同士はあまり立ち入らないほうがいいと思っていた時期もありました。それが民主党の文化でした。後輩にもうるさく言わないほうがいいと思っていました。だけど、その考え方は棄てました。思ったように言っていこうと思います。若い議員さんには積極的にアドバイスして、必要なら助太刀にもいきたいですし、そうやって、もう一度チームを、できれば、多様性のあるチームをつくりたいと思います。

【塩田】「わが民主党改革宣言」で、「民主党には3つの世代が存在する。第1には、55年体制の下で議員になり、自民党、社会党、民社党から離合集散を経て民主党に合流した第1世代」「1993年以降の政界再編の過程で議員になったのが第2世代」「98年に今の民主党が結党されてから当選したのが、私を含む第3世代」と書いていますね。

【細野】第1世代、第2世代、第3世代とか、あまり分けて言わないほうがいいかもしれません。ですが、政党の中で切磋琢磨、あるいはある種の競争が必要と思います。競争が行われる中で、最後にどう結集するかというところに持っていかなければなりません。

私自身もそういう中で互いに鍛え合えるような関係をつくりたいと感じています。比較的、年も若いので、ある種の突き上げ役が自分の役割かなと思っています。

【塩田】民主党の場合、トップを目指す人はたくさんいますが、下支え役、神輿の担ぎ手、参謀・軍師型、時には憎まれ役も買って出るというタイプが少ないのでは……。

【細野】本当にそうです。泥をかぶり、汗をかくといった人が少ないです。私自身も反省があります。役員秘書や副幹事長などを務め、小沢一郎さん(元代表・現生活の党代表)、前原誠司さん(元代表・元外相)の下にいたり、菅さんのところでも補佐官をやりましたが、その役をやり切ることができなかったという反省はあります。そういうことが本当にできる人が民主党の中に生まれてこないとダメだと思います。