打ち出す理念の一つは「未来への責任」
【塩田】政権党の安倍自民党との対立軸、安倍政治との違いを、選択肢として国民に提示する場合、何が大きなポイントになりますか。
【細野】民主党が打ち出すべき理念の一つは「未来への責任」です。将来を考えて、持続的な政策をやらなければなりません。たとえば財政、エネルギー、環境などの問題にきちんとコミットしていることをどれぐらい示せるかが重要です。子どもの政策も一つの柱にしなければなりません。もう一つは「多様性」です。国のあり方でいえば、分権で多様な国家をつくることです。そのほかに生き方の多様性、家族のありかたの多様性もあります。
仲間の中でもいろいろ議論がありましたが、選択的夫婦別姓の問題、LGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー)、特別養子縁組などの問題があります。いずれも日本の制度によってある種の価値を規定してきたものについて、多様性を認めることができれば、それが活力になるし、経済の強さにもなるという発想に立って、政策の転換できるか、恐らく自民党では無理だと思います。
【塩田】野党の結集は、なんといっても野党第2党の維新の党との連携・協力の成否がカギになると思います。ところが、現実には維新の橋下徹・共同代表(現大阪市長)は、「民主党は維新をぼろくそに言う。大阪の状況を見れば、手は組めない」と口にしています。一方、維新の中には、できれば民主党とも一緒にやりたいと言っている人もいます。10月2日には民主党の海江田代表と維新の江田共同代表の会談もありました。
【細野】野党側は、国会での戦い方などを見ても、だいぶ雰囲気が変わってきました。橋下市長は発信力のある人ですから、いろいろな要素を考えながら、自分なりに発言をされていると思います。われわれもそれを聞いてはいますが、現実に一つ一つ積み上げていく作業は大きく変わるわけではないので、きちんとやっていけばいいと思います。
われわれは自分たちの理念や政策を確立することが一番大事です。それを共有化できるかどうかは国会での論戦次第です。労働組合などの支援団体との関係や政党間の関係で、最終的にどう政治判断するかという問題があると思いますが、その備えとして、やることをやらなければ、判断すらできません。
【塩田】「民主党第3世代」と自ら口にし、年齢もまだ43歳と若い細野さんは、次期総選挙での野党結集や政権交代の再現よりも、日本の政治の将来について、長期的な展望を構想して、自身の選択の判断基準としているのでは、という想像も働きますが……。
【細野】自分には将来的に政治的キャリアが長くあるとか、判断を保留して延命しようといった考えはまったくありません。3年前に東日本大震災と原発事故があり、そこに立ち会ったわけです。政治家としても一個人としても命懸けでした。死ぬかもしれないと思う場面が何度かありました。それでも今、こうして政治家として生き長らえているわけですから自分の中で何かもったいぶるというところは全くありません。「ここは勝負」というときには、逃げずに判断していこうと思っています。