トップ自らの率先垂範と制度的後押し

【竹内】新たに体系化した理念をどのようにして浸透、活用していきたいとお考えですか?

【山名】経営陣の主体的参画が重要です。なぜなら、これが事業の競争力を生み出すために必要だからです。私自身は、それぞれの立場の人たちにできるだけ分かりやすく、繰り返し伝えていきたい。2年、3年、あるいはそれ以上かかるものだと覚悟し、粘り強く語り続けます。フィロソフィー浸透のためだけの活動を繰り返すというより、事業に即したさまざまな場面で、事業とフィロソフィーを関連づけ、啓蒙していくことをイメージしています。そして小さくても成功例を出していきたい。フィロソフィーの効用が分かるような取り組みにどんどん光をあてていきたいと思います。

ただ私一人では限界があります。まず、個々人の想いをきちっと共有し、私も含め新しい役員メンバー全員が率先垂範していくことを期待しています。理念浸透はコーポレートの専門部署に任せておけばいいということではありません。このフィロソフィー展開の取り組みは、経営戦略、事業戦略の実行体制づくり、すなわち組織をジャンルトップを狙える戦闘集団に仕立てることと表裏一体であるという位置づけを理解し、執行責任を持っている人間が自らの責任範囲の一環として取り組まないと理念の浸透は成功しないでしょう。

くわえて評価制度とも連動させていきたい。意識や行動を変えるには、人事改革が必要です。最高のパフォーマンスを出すために人をどう活かすかということは、人事の重要な使命です。そのために、チャレンジすれば報われるという当たり前のことを、もっと愚直に評価に反映していきたいと考えています。

【竹内】理念の浸透実践は事業と表裏一体の経営そのものという位置づけで、トップはもちろん各事業のリーダー層が率先して関与していくわけですね。本気度の伝わってくるお話をありがとうございました。

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 次回は、理念経営を実践していく上でのポイントとして、コニカミノルタの事例からどんな学びがあるか、筆者が注目した点について解説してみたい。
竹内秀太郎(たけうち・しゅうたろう)●グロービス経営大学院主席研究員。東京都出身。一橋大学社会学部卒業。London Business School ADP修了。外資系石油会社にて、人事部、財務部、経営企画部等で、経営管理業務を幅広く経験。日本経済研究センターにて、世界経済長期予測プロジェクトに参画。グロービスでは、人材開発・組織変革コンサルタント、部門経営管理統括リーダーを経て、現在ファカルティ本部で研究、教育活動に従事。リーダーシップ領域の講師として、年間のべ1000名超のビジネスリーダーとのセッションに関与している。Center for Creative Leadership認定360 Feedback Facilitator。共著書に『MBA人材マネジメント』『新版グロービスMBAリーダーシップ』(ダイヤモンド社)がある。
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