コニカミノルタが2003年に経営統合してから丸10年。創業事業だった写真関連のBtoCビジネスからの撤退という試練を乗り越え、情報機器事業を核としたBtoBソリューションビジネスへと事業の軸足を移してきた。この春にトップに就任した山名新社長は、「DNAの進化」をめざし、新中期経営計画と共に新たに整理した理念体系をリリースした。統合会社としての出自を持つコニカミノルタの弛まぬ変革をさらに推し進めるために、どのような意図をもって理念の浸透をはかろうとしているのか。今回は、山名昌衛新社長へのインタビューを紹介する。(文中敬称略)

理念とは経営の「拠り所」

【竹内】経営において理念はなぜ重要なのでしょうか。ご自身が理念の効用を実感した経験をお聞かせください。

【山名】2つの事例を挙げたいと思います。1つ目はコニカミノルタの経営統合にあたって考えたこと、2つ目はもっと古い話ですが、私の経営者としての原点となったアメリカでの経験です。

統合前の会社には、それぞれの歴史があります。制度、システム、使っている言葉など、違いを挙げればきりがない。そんな違いがあっても、大事なのは心を一つにすることでした。何より誇りを持てる企業にしたいと思いました。その際に着目したのが企業文化の共通点です。

コニカとミノルタに共通していたのは、ものすごく誠実であるということです。親身になって物事をとらえる。オープン、フェアで、責任感も強い。両社に共通するこのすばらしいDNAを統合会社でも大切にしたらいいではないかと思いました。当初、旧社の違いが大きいと懸念された海外からも共感を得ることができました。統合後に入社した人、M&Aを通じて参画した人からも「コニカミノルタは素晴らしいカルチャーを持っている」と言われることも幾度となく経験しました。