経営統合から丸10年を経て、今春より新たにコニカミノルタのトップに就いた山名昌衛新社長。統合後に情報機器ビジネスを核として、競争力強化のための構造改革が進められた。その中で、創業事業である写真関連ビジネスからの撤退という苦渋の決断もあった。ブランドを象徴する商品を捨てる、という際の葛藤の中でどんなメッセージが出されたのか。今回は、苦境を乗り越える上で理念が果たした役割について見ていきたい。(文中敬称略)

カルチャーを共有すれば、違いを乗り越えて融合できる

共に写真関連の老舗企業で世界的なブランドを有し、精密機器業界大手の一角としてほぼ同格の存在感のあるコニカとミノルタだが、企業合併につきものの人事や会計制度、情報システムの統合が必要だったのはいうまでもない。またコニカは東京に本社を構える関東系、ミノルタは大阪が本社の関西系という出自の違いもあり、業務慣行も異なる。同業であっても、専門用語の社内呼称が異なることは珍しくない。例えば、意図しない複写を防ぐ機能のことを、一方では“地紋”といい、一方では“コピープロテクト”というなど違っているため、お互いの言葉を理解するのに時間がかかったという。

そうしたハードルがあっても、両社は上手く一緒になれると確信していたと山名は述懐する。統合直前ミノルタの経営企画部長として統合の陣頭指揮にあたっていた山名は、事業構造として両社の強みが補完的であるのはもちろんのこと、両社には共通するDNAがあると感じていた。共に、親身になって物事をとらえる誠実なカルチャーがあることに着目し、この素晴らしいカルチャーを共有していくことで、制度やシステムのような表面的な違いは乗り越えられると考えたのだ。