iPhoneを空中にかざすだけで、その場所と対応する情報が表示される――昨年9月、そんなアプリケーション「セカイカメラ」を日本のベンチャー企業である頓智ドットが発表した。その技術は世界中の注目を集め、公開から4日間のダウンロード数は10万回に及んだ。このように、現実空間に情報を重ね合わせて現実を拡張する技術を「拡張現実(Augmented Reality、以下AR)」という。

iPhoneで「セカイカメラ」を起動すると、目の前の映像に加えて、付加情報が表示される。

iPhoneで「セカイカメラ」を起動すると、目の前の映像に加えて、付加情報が表示される。

コンピュータによってつくり出される「仮想現実(Virtual Reality)」と比較して説明しよう。VRはコンピュータの中にもう一つの世界が構築されるのに対し、ARの場合は、たとえば端末が位置情報を読み取って、その場所で誰かが発した情報や写真を見ることができるというように、現実を補う形になっているのが特徴だ。

1960年代の米国でヘッドマウント・ディスプレーの研究が発表されて以来進化を続けたARは、今やスマートフォンやPC上で利用できるようになった。では今後はどのような発展の可能性を秘めているのだろうか。

東京大学大学院情報学環教授の暦本純一氏は「洋服の試着、化粧支援、美容支援、家具を仮想的に置いてみるなどの変更シミュレーションは、いずれも現実の映像にCG映像をプラスするというARの特徴を使う方法で解決できる」と話す。

仮想世界での取引やコミュニケーションも珍しくなくなった今、ARは実世界と密着したコミュニケーション・広告ツールとして、今後自然に受け入れられていくのではなかろうか。

(頓智ドット=写真)