「経営陣総取り替え」「要件が厳しく時間もカネもかかる」というネガティブなイメージから敬遠されてきた倒産処理法「会社更生法」が変化している。

昨年1月、不動産会社・クリードが“DIP型会社更生”第1号案件として注目を集めた。DIPとは「Debtor In Possession(占有する債務者)」の略で、経営陣に事業経営を継続させながら会社更生処理を行うことを指す。第三者が介入するより元の経営陣が続投すれば効率的であることも多く、事業価値の低下や信用毀損を最小限に食い止められるというメリットがある。

今まではその負のイメージから多くの経営者は民事再生法を選びがちだった。2008年12月、こうした事態を見かねた東京地裁の裁判官が「会社更生手続きをしたからといってすべての経営者に違法な経営責任があるわけではない」とDIP型会社更生に言及した論文を発表した。運用拡張に関して裁判所が自ら提言するのは異例のことだが、これを機にDIP型は徐々に浸透し、昨年11月の申請件数は12件に上った。

実は「会社更生法」の柔軟化はこれだけではない。先日同法を適用したJALは、仕入れ代金など商取引債権については全額支払うと発表した。これは「債権者は債権額に応じて平等」という原則を崩して商取引債権を保護する“特別扱い”が許された点において、法曹界でも画期的な事例となった。また、先述の論文には上場を維持したまま会社更生を行うというケースも想定されており、倒産の選択肢の一つとして同法の利用価値は高まりそうだ。