子供がいなくて死別相手の親にも相続権

というのは名義変更は実質的にはローンの借り換えを意味します。夫婦の収入合算で年収800万円だから借りられたローンが、夫1人で年収500万円になった場合など銀行が承諾してくれないことが多いのです。また、名義変更時に譲渡所得税が発生することも。それでも、きちんと名義変更しておかないと、元妻が死亡した後、共有持ち分が元妻の再婚相手や元妻の親族などという赤の他人の手に渡ることになり、トラブルの種になりかねません。

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共有名義のまま離婚した場合の問題点

つまり、よほど資産価値のある物件でない限り、ローンが残ったまま離婚してもいいことはありません。金銭的な損失が嫌であれば、完済まで離婚を思いとどまるか、頑張って繰り上げ返済して、一刻も早く完済することです。そうでない場合は、ローン残高や持ち家の資産価値などを吟味し、“一番傷口が浅い”選択肢を選ぶしかありません。

そもそも、持ち家が高く売れる物件であれば、ローンが残っていても何とかなります。持ち家購入時に、離婚までは視野に入れないとしても、資産価値のある物件を買うということは、人生の選択肢を増やすことでもあるのです。

ところで、夫婦で共有名義の持ち家を持ち、片方が死亡した場合にも注意が必要です。子供がいない夫婦の妻が亡くなると、妻の共有持ち分のうちの3分の2を夫が相続しますが、その残りは妻の両親にいってしまいます。その親が亡くなっていれば、割合は異なってきますが兄弟に、と配偶者の血縁に相続権が移っていきます。日頃から関係が良好であれば、共有名義分を相続放棄してもらえるでしょうが、不仲だと、「私にも権利があるので分けて」などと言われるトラブルに発展する危険性もあります。親戚付き合いは大切だということです。

住まいのカリスマアドバイザー 中川寛子
住まい・街選びや買い方、暮らし方の提案を行う東京情報堂代表取締役。著書には『住まいのプロが教える家を買いたい人の本』など多数ある。
(構成=吉川明子)
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