実は住宅ローンの返済が一時できなくなっても、そのままマイホームに住み続けられる方法がある。その“王道”ともいうべきものが「個人の民事再生(以下、個人再生)」の活用だ。

会社と違って個人再生の場合、住宅ローンを除いた負債総額が5000万円を超えていない限り、裁判所の裁量で再生計画が認可される場合があるなど手続きが簡易。また、いくつものサラ金に債務があって、そのままでは住宅ローンを払い続けられない状態でも、住宅を手放すことなくサラ金の債務を大幅にカットできる可能性が高い。

しかし、カットできるのは住宅ローンを除いたサラ金などからの一般債務で、住宅ローン自体は対象外。「すでに返済が滞って残額の一括返済を示唆されており、それでは困る」という人は、「住宅資金貸付債権に関する特則(住宅ローン特則)」を活用して返済方法を見直してもらう。

そこでよくとられているのは「月々の返済」という元の状態にリセットする方法。滞納していた元本や利息、延滞損害金は、認可決定までに解消するか、将来、約定の返済額に上乗せして解消していく。いままでの返済方法では不安だという場合は、返済期間の延長や、元本の返済を一定期間猶予してもらったうえに返済期間を延長する方法もある。すでに銀行からリスケジュールなどを受けていても、個人再生にすればさらに楽な条件で返済しながら住める公算が大きくなる。

もっとも、住宅ローン特則を利用できないこともある。二世帯や店舗付き住宅で総床面積の2分の1以上を債務者自身が居住用に使用していないと、特則の対象にならない。ローン保証会社が債権者へ代位弁済してから6カ月を過ぎた場合も利用できなくなる。住宅に住宅ローン以外の債務を担保するための抵当権が設定されている場合も利用できない。

一方で「任意売却」を使って住み続けることも不可能ではない。住宅ローンを組んでいる場合、マイホームは銀行やローン会社の抵当権が設定されて担保に入っており、よく「売れない」と考えてしまう。しかし、「抵当権者である銀行などの同意がないと、売却するのは難しい」というのが正しい。つまり、売却代金を優先して抵当権者の支払いにあてることを条件に事前交渉して、抵当権を外してもらえばいい。そうして行う売却処分が任意売却なのだ。