実は、銀行やローン会社は不良債権を抱え込むことを嫌う。抵当権を実行して競売にかけようとしても、配当を受けるまで半年以上かかり、落札価格が時価を大幅に下回ることも多いからだ。それが任意売却なら、早期に時価で処分できる。任意売却は、債務者、債権者、抵当権者、どれにとってもメリットの大きい処分方法なのである。

そこで任意売却する際に、債務者は信頼できる親族・親類縁者や友人などに買い手になってもらう。そして、その買い主から売却後に賃貸してもらえば、そのまま住み続けられるというわけだ。

しかし、買い主が債務者の配偶者の場合は、離婚や別居という事実がないと債権者が任意売却に同意しないことがある。また、両親が買い手になるケースでは代位弁済による贈与とみなされて、贈与税を課される恐れもあるので要注意だ。

もし、ローンの残高が任意売却の価格を上回って残債務が発生する「オーバーローン」の状態だったら、任意売却後に他の一般債務と一緒に破産を行う。明らかなオーバーローンなら、他の債権者から「売却価格が安すぎる」というクレームはつかず、コストの面でも破産手続きを進めやすい。また、任意売却後にオーバーローンで残ったローンの残債務を個人再生で大幅カットする方法もあるが、その仕組みは後で説明する。なお、オーバーローンでなくて任意売却(ただし厳しい価格査定が必要)で余剰金が出た場合に、それを頭金にして他の債務について任意整理することもある。

※すべて雑誌掲載当時

(構成=伊藤博之)