気持ちよく酔わせてくれたジン「バーネット」

ワールドカップ関連試合のほか、日本のサッカー界を全面的に支援しているKIRIN。そのロゴを眼にすると、私は暗示にかかったように、

「ジンでも飲まなきゃ、やってられないぜ」

棚に置いてある「ボンベイ・サファイア」に食指をのばしてしまう。

ジンとのなれ初めは社会人と名乗るもおこがましい1978年頃。仕事をなかなか覚えられず、毎日叱られてばかりで暗欝な面持ちの私を見かねたのか友人が誘ってくれ、たまたま入った店で彼が、

「ジンを飲もうよ」

と、注文。そこのバーテンダーに勧められたのが、「バーネット」であった。

オンザロックのグラスを口元へ運べば、つんと鋭く刺激する香木系のスパイシーなアロマ。学生の頃からカレー作りにはこだわりがあり、朝岡香辛料の実験に使うような容器に詰められたスパイスを10種類くらい食器棚に並べて悦に入っていたものだ。

「キャラウェイ、コリアンダー、レモンあと何だろう。いろんなスパイスの香りがする」
「ごたくはいいから、飲めば」

氷に冷やされた液体には強烈なアルコールの刺激があって、同時にさわやかな香辛料の風味がひろがり、たちまち陶然となった。

「初めてだけど、いいね、ジン」
「安いし」

ウィスキーなどに比べると、半額以下の料金で、ろくな稼ぎもない青二才には願ったり叶ったり。感激した私は翌日さっそく酒屋で「バーネット」を求めた。760mlで980円。キリン・シーグラム社が日本国内でライセンス生産しているため、他社より10ml多くて、最安値を実現できた、と店主が解説してくれた。

ゲルピンの若造を気持ちよく酔わせ、憂さを忘れさせてくれたのが、KIRIN「バーネット」ジンなのであった。