「アベノミクス」は成功したとは思わない

【塩田】現在の安倍政権をどう見ていますか。

【浅田】アベノミクスは結局、失敗に終わると思っています。物価が上昇しても、結局、賃金が上がらないという最悪の結果に近づいていると思う。そういう意味では約束は守れなかった。株価も上がって多少、景気がよくなった部分もありますが、実質的な意味での経済成長は実現できていません。「3本の矢」の肝心の成長戦略では、規制緩和が前に進まない。岩盤規制はいまも健在です。デフレから脱却できたかどうかというところにきているのは事実ですが、デフレ脱却で個人の実質賃金が上がっていくという明るい展望はないから、アベノミクスは成功したとは僕は思わない。

【塩田】安倍首相は集団的自衛権の行使容認の実現に懸命です。維新の会は、この問題では安倍首相の姿勢を支持していますね。

【浅田】いまの法制下では対応できない事態が想定され、法整備が重要となって、それに取り組んだという功績は大きい。有事の場合の自衛権の行使や防衛行動について、いままでの変な理屈をきちんとした理屈に変えたという功績も大きいと思います。もともと集団的自衛権という概念は、国連憲章第51条に書いてあるだけで、日本は集団的自衛権、個別的自衛権と分けて考える必要はありません。全部を自衛権という範囲で考えるべきです。

【塩田】以前のインタビューで、「安倍さんが自民党総裁に復帰する前、維新の会が構想する新政治勢力のドリームチームのトップに安倍さんを担ぐプランを想定していた時期があった」とお聞きしました。その後、首相に返り咲き、在任期間も1年半が過ぎましたが、安倍首相の政治の進め方やリーダーシップについて、どう見ていますか。

【浅田】やはり人柄のよさがあり、それで人を集めていると見ています。チーム内のオフェンスとディフェンス、フロントベンチとバックベンチが役割を分担し、うまく回っていると観察をしています。僕らのドリームチームのトップに、と考えましたが、こちらのベースでやってもらえたら理想的だったなと思う。そういう意味では、僕らは見誤っていなかった(笑)。ただ、経済政策の部分ではこれから怪しくなるだろうと思いますが。

【塩田】安倍首相は維新を友党と見て、当てにしているのでは。集団的自衛権の問題や将来の憲法改正で現在の自公連立政権ではうまくいかないと思ったときは、連立の組み替えを行って維新を政権に引っ張り込む考えも持っているのではないかと思いますが。

【浅田】いまは与党と野党です。連立を組んだ時点で僕たちの存在理由はなくなります。存在する理由があるのですから、この立場を貫く必要があります。だから、安倍政権とは是々非々で対応する。国会では多数党が内閣を形成するから、是々非々の関係はないですが、僕らは地方議会出身の発想だから、是々非々という対応は「あり」と考えています。

【塩田】中央政治では、長期の自民党政権の後、民主党政権が誕生し、その後に自民党政権が復活しましたが、混迷が続くいまの時代、国民にとって、政治が果たさなければならない最大の役割は何だと思いますか。

【浅田】政治の役割は、何といっても国民の生命と財産を守ることにあると思います。その観点に立つと、穴の空いているところは埋め、現実に即して政策を立案していく。国家と国民の利益を求めて現実的な政策を打ち立てていくという政治スタンスのプラグマチック集団はいままでなかったので、新しい現実に即して法律をつくり、穴を埋めて、国民利益を守っていく。そういう勢力を形成していきたい。それにプラスして、いまの豊かさを維持し、それ以上に豊かにしていく。そのためには古い制度に縛られない政治勢力の結集が必要ですから、それを目指して野党再編を進めていく。