不確実な時代こそ部下との対話を

では、「トランザクティブ型」と「トランスフォーメーショナル型」のどちらが、組織に成功をもたらすのでしょうか。これまでの研究では、トランスフォーメーショナル型のほうがよいとする研究結果が、全般的に多く出ています(例:ノースカロライナ大学グリーンズボロ校のケヴィン・ロウェ教授ら3人が1996年に発表した研究など)。

しかし、この問いに対する正確な答えは当然ながら、「組織や事業環境によって、求められるリーダーシップは違う」というものでしょう。そして、その視点から私が注目したいのは、「事業環境の不確実性」です。なぜなら、これからの時代はどの業界も、グローバル化、IT技術の進展、規制緩和などによって不確実性が一層高まることが予想されるからです。

そしてやはり複数の研究で、「不確実性の高い事業環境ではトランスフォーメーショナル型(あるいはカリスマ型)のリーダーシップこそが組織のパフォーマンスを高める」という結果が出ているのです。たとえばアリゾナ州立大学のデビッド・ワルドマン教授らが2001年に発表した研究では、「フォーチュン500」(米フォーチュン誌が発表する全米トップ500企業)のうちの48企業を対象にした統計分析から、部下が事業環境に不確実性を感じている企業こそ、CEOがカリスマ型であるほど利益率が高まる傾向が示されています。

この結果は、みなさんの直感とも整合的かもしれません。事業環境が視界不明瞭なときにリーダーにまず求められるのは、部下に向かうべき方向性、すなわちビジョンを指し示すことです。そして部下との対話を欠かさず、人としての成長も促す。そういうトランスフォーメーショナル型のリーダーが、不確実性の高くなる事業環境では求められているのです。