手放しで喜べない業績回復
「今年度の業績は期初目標を上回る見通しです。配当についても、中間期と合わせて13円の復配を見込んでおり、最低限の目標は達成できたと考えている」
パナソニックの津賀一宏社長は3月27日に行った事業方針説明会でこう胸を張った。その表情は1年前の説明会の時とは違い、時折笑みを浮かべるほどだった。
パナソニックは昨年度まで2期連続で7500億円超の最終赤字に苦しんだが、2013年度は売上高7兆4000億円、営業利益2700億円、最終利益1000億円と大きく改善する見込み。津賀社長の顔から笑みが出てくるのも自然かもしれない。
しかし、その内容は決して手放しで喜べる状況ではない。リストラと円安効果によって業績が立ち直ったわけで、主力の家電事業は縮小しているのだ。伸びているのは自動車関連事業や住宅関連事業で、言ってみれば“下請け”で稼いだのである。パナソニックらしい商品を開発・販売して業績を回復させたわけではないのだ。
大手電機メーカーの元経営者も「最近の日本の電機業界は自動車業界など他の産業におんぶにだっこで情けない」と話し、革新的な商品を開発し、新たな市場を築くことが少なくなったことを危惧している。
日本の家電が総崩れになった現在、業績を急速に回復させたパナソニックには、そうした革新的な商品を生み出して業界を引っ張っていく役目があり、同社が再び成長軌道に戻れるかはひとえにそこにかかっていると言っていいだろう。