会って5秒で「信頼する、しない」は判断されている

電話で対応してくれたスタッフにお礼を言いたくてフロントへ行くと、そのスタッフがいました。すこし驚いたことに、とても若い女性でした。ホテルスクールを卒業して、まだ1年経っていないこと、シュルツ氏をとても尊敬していて、その哲学に共鳴していることを話してくれました。

そして、シュルツ氏の思いが文章化された、カペラにおける「キャノン」(CANON:ラテン語で法の意)カードを見せてくれたのです。「ビジョン」「ミッション」「サービス・プロセス」「サービス・スタンダード」など、スタッフが守らなければならない「掟」が記され、それがオリエンテーションや日々のミーティングで、ビジョンの共有と行動への適用は徹底的にフォローアップされること。さらに、ハウスキーパーから総支配人まで全員がキャノン・カードを常時携帯し、行動に照らし合わせていることを教えてくれました。

「サービス・プロセス」のいちばんはじめには、「WARM WELCOME」という言葉が記されています。「お客様と出会う最初の瞬間を大事にしなくてはならない」。これはシュルツさんがオリエンテーションでスタッフに繰り返し伝えていることです。「第一印象で、お客様の滞在が決まる。迎えるスタッフの最初の印象で、たとえそれ以外がパーフェクトだったとしても、すべてが台無しになってしまうこともある」。

お客様を迎える心は、サービスの送り手の表情、視線の動き、言葉の温度などに凝縮され、それがお客様に与える第一印象となります。どんなに美しいものであっても、それが本心でないなら、お客様には伝わってしまいます。心からお客様を歓迎しているかどうか、お客様のためにあらゆる努力を尽くす用意ができているかどうか、そのサービスは信頼に値するかどうか、それらは瞬時に判断されているのです。