投票日、ガソリン価格が史上最高値に到達

トランプ氏は首都ワシントンの改修事業に入れ込んできた。日本でも度々取り上げられてきたのが、ホワイトハウスの東棟を取り壊してのボールルーム(舞踏ホール)の建設だ。これと並び、ホワイトハウスから数ブロック先では、リンカーン記念堂の前に細長く広がる池「リフレクティング・プール」の改修も現地で議論を呼んだ。底を青く仕上げたものの、数日で藻が繁殖して水はかえって緑色を帯び、塗装も一部が剥がれた。

リンカーン記念堂のリフレクティング・プールに映るワシントン記念塔
リンカーン記念堂のリフレクティング・プールに映るワシントン記念塔(写真=NOAA Photo Library/CC-BY-2.0/Wikimedia Commons)

投票日の前日、トランプ氏はその池で記者会見を開いた。池の底を写した写真パネルを掲げ、この夏に繰り広げた藻との闘いを20分以上にわたって語り続けた。「新品の配管を入れた。藻などの点で、配管はとても重要だ」。公金を投じた工事をめぐる熱弁から一夜明け、迎えた投票日。よりによってこの日、ガソリンと軽油の全米平均価格は史上最高値をつけたと、ヴァニティ・フェアは伝える。

共和党敗北の要因は、奇策の失敗のほかに3つあった。1つ目はガソリン価格の高騰に代表される物価高だ。AP通信の調査では、回答者の約8割が物価高で家計が苦しくなったと答えている。BBCが伝えたように、こうした声に対してトランプ氏はこれまで、物価高は民主党による「でっち上げ」だと主張してきた。

2つ目の要因は、イラン戦争の開戦だ。ヴァニティ・フェアによると、親トランプ派の論客マット・ウォルシュ氏でさえ、結果としてエネルギー危機を引き起こしたこの戦争についてXに、「アメリカ・ファースト(アメリカ第一)の原則への許しがたい裏切り」だと投稿している。

権力を私物化する大統領への怒り

共和党敗北の3つ目の要因は、権力を私物化する大統領への怒りだ。AP通信の同じ調査では、回答者の約半数が政府の腐敗を「決定的に重要」な争点に挙げており、生活費の高騰とともに重要な関心ごとになっている。約6割は、大統領が国の利益より自分の利益を優先していると答えた。

ニューヨーク・タイムズによると、ミシガン州の整備店主ジェフ・ファワズ氏は、戦争をやめ、小規模事業者を助けるという約束を信じ、トランプ氏が挑んだ3度の大統領選のうち2度で同氏を支持した。だが今はトランプ氏を「これまで見た中で最も、金を出す者の言いなりになっている大統領」だとみて、同州上院選で民主党候補のアブドゥル・エルサイード氏に票を投じたという。

同紙が取材したカンザス州の共和党員で元州判事のヴァン・Z・ハンプトン氏も、これまでトランプ氏に2度投票した。しかし今回、連邦議会選や州の選挙など同じ投票用紙に記載されるすべての選挙で、民主党の候補に票を入れている。すべて民主党に投じたのは、同党のジミー・カーター氏が大統領に選ばれた1976年以来、50年ぶりのことだという。ハンプトン氏はトランプ政権が運営する連邦政府を、「盗賊に乗っ取られた船」にたとえる。勝利した民主党には、「愛しているからではない。正しいことをしてほしいからだ」とくぎを刺した。