身代金を払った企業の6割はデータが戻らず
アサヒの復旧は長期に及んだ。フランスのセキュリティ企業シベルエンジェルの分析では、かかった期間は2カ月以上。アサヒに続き、翌月に攻撃を受けた事務用品通販のアスクルでも、法人客は約6週間FAXでの発注を迫られた。
誤解のないように補足しておくと、アサヒやアスクルは身代金を支払っていないと報じられている。ただ、大企業でさえこれほど長い期間を復旧に要したのは事実だ。シベルエンジェルによると、こうした復旧の長期化は、攻撃者にとって見返りを見込みやすいことを意味するという。
日本サイバーディフェンスのカータン・マクラフリンCEOはBBCの取材に、攻撃への備えがなく、身代金の支払いもいとわない組織が日本には多いと指摘した。そうした組織の多さが、攻撃者を呼び込んでいるという。
実際、フォアスカウトが紹介した日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)の調査によると、これまでにランサムウェアの被害を受けた国内の企業は少なくとも507社に上り、そのうち44%が身代金を支払った。ところが、支払った企業の63%は、データを取り戻せていない。
1日平均約1510万回の攻撃を検知
攻撃の勢いも衰えていない。テレビ朝日によると、セキュリティ会社サイバーセキュリティクラウドが国内企業のサイトへの攻撃として検知した回数は、今年に入って増え続けている。9月には1日平均約1510万回に跳ね上がった。
同社の画面には、直近15分間に世界中から日本へ押し寄せた攻撃の様子が映し出されている。その数、1秒間に135回ほど。同社の代表取締役で最高技術責任者を務める渡辺洋司氏は、「全然(攻撃が)ない時間というのはほぼなくて、常に来ているような状態」と語った。
攻撃者のうまみを減らそうと、政府はようやく動き始めた。10月1日には、いわゆる能動的サイバー防御法のうち、「官民連携の強化」と「アクセス・無害化措置」に関する規定が施行された。内閣官房国家サイバー統括室の発表によると、重大な被害のおそれがあるなどの要件を満たせば、攻撃に使われているサーバーにアクセスし、不正なプログラムを停止・削除できるようになった。基幹インフラ事業者からのインシデント報告も始まっている。
だが、攻撃は収まる気配がなく、全容の解明も進んでいない。古川デジタル相は一連の攻撃について、「解明の進展は遅い」と認めている。

