被害は金融から物流、大学、警察まで

世界的に増えるサイバー攻撃。このうち、データを勝手に暗号化して「人質」に取るランサムウェアに限れば、日本を対象とした攻撃件数は、世界を上回るペースで増えているとみられる。

米セキュリティ企業フォアスカウトの集計では、2026年1〜4月に日本の組織に対するランサムウェア攻撃の件数は、前年同期から39%増えた。集計期間が異なるため単純には比べられないが、世界全体の上半期の増加率(25%)をしのぐ数字だ。

この秋の被害は、業種を問わない。タイムズカーの情報流出以外にも、金融機関や物流企業、大学や警察にまで被害が広がっている。

大和証券や第一生命、ヤマト運輸、佐川急便が、次々に被害を公表した。ニューヨーク・タイムズなどが海外でも報じたように、ソフトバンク傘下のクラウド事業者IDCフロンティアがランサムウェア攻撃を受け、鉄道会社や警察本部、企業や自治体など500近い組織に影響が及んでいる。古川俊治デジタル相は10月9日の記者会見で、サイバー攻撃について、「全分野に及んでいる」との認識を示した。

米サイバーセキュリティ専門メディアのザ・レコードによると、大阪公立大学では、ランサムウェアによるとみられる攻撃で約500台のサーバーが止まった。大学は流出を確認していないと発表したが、メールから給与計算、図書館システムまで、学内の多くのシステムが稼働不能に陥った。ニューヨーク・タイムズによれば、授業は1週間にわたって休講となった。

セキュリティ企業TrendAIの調査では、2026年1月〜9月に国内で明らかになったサイバー攻撃は600件を数える。この時点で早くも2025年1年間の件数を上回っているという。フォアスカウトの国別集計では、2026年1〜4月にランサムウェア攻撃の標的となった件数で、日本は世界14位。2年前の同時期の28位から、一気に順位が上がった。

機能しにくくなった「日本語の壁」

日本が狙われる理由は3つある。侵入しやすいこと、盗んだデータが売れること、そして身代金を払わせやすいことだ。

まず、日本企業のシステムに侵入しやすくなった。かつては日本語の壁が、海外の攻撃者の行く手を阻んでいた。AI活用を掲げる政党「チームみらい」を立ち上げた技術者で党首の安野貴博氏は、ニューヨーク・タイムズの取材に次のように語る。5年ほど前までは、攻撃者からの偽メールや偽電話の日本語がぎこちなければ、すぐに偽物だと見抜けた。ところが今はAI翻訳によって、他人になりすまして情報をだまし取るフィッシングの手口が巧妙になってきている。

攻撃前の下見も、AIでずっと楽になった。セキュリティ企業ブラックパンダの平岡正樹氏はフィナンシャル・タイムズに対し、時間のかかる下調べの一部をAIに任せれば、少人数でもはるかに多くのシステムに探りを入れることができると説明する。

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国内メディアの取材でも、同様の指摘が出ている。日本ハッカー協会の杉浦隆幸代表理事はテレビ朝日に対し、攻撃者がプログラムの脆弱性を見つけるAIを使っている可能性が高いと指摘する。本来はセキュリティ向上のための技術を、攻撃に転用する人が増えたという。ただし、ニューヨーク・タイムズが報じたように、今回の一連の攻撃でAIが使われたのかどうか、政府はまだ調査中との立場だ。